【2022年度の私大一般選抜予測】合格者数は増え続けている!
コロナ禍の昨年度は大学入学共通テストの導入など、新たな大学入試制度が始まった年でもあった。
私大一般選抜は前年比で約14%減と未曽有の志願者減となったが、最終的な合格者数は3月に入ってからの追加合格などを含めると、大きく増えた大学が多かった。
ここ数年、受験生を悩ませてきた入学定員厳格化による大手私大の合格者絞り込みも落ち着き、入りやすい状況になってきたと言えそうだ。
本稿ではデータを用いつつ、直近に迫った2022年度私大一般選抜の動向を予測したい。
夏の記事で2021年度一般選抜において私大の志願者数が大きく減った状況について解説したが、本稿では合格者数を交えて改めて2022年度入試の最新状況を見ていきたい。
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下図に過去3年間の首都圏私立総合大学の有名校、早慶上智、MARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政大学)、日東駒専・大東亜帝国、各校の一般選抜における志願者数・合格者数・倍率をまとめた。
真っ先に目に付くのは倍率だ。3年前(19年度)は表中17大学の7割強にあたる13大学が5倍を超えていたものの、2年前(20年度)は6大学とほぼ半減し、今春(21年度)で5倍を超えているのは早稲田大学のみの1校にまで激減しているのだ。
このことからも、大規模私大の高倍率がこの2年ほどでかなり緩和されている様子がわかる。志願者減が続いているのに合格者数が増えた大学が多いからである。
もっとも、MARCHと呼称される大学群の倍率は各校とも4倍台と依然として高い水準であるが、3年前と比べれば下がっている。
そのほかにも大学によっては倍率が3倍台、中には2倍台のところもあるなど、一般選抜で第一志望に挑む受験生にとってチャンス到来ともいえる。
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数年前までは「難関私大は一般入試では受からない」、「模試でA判定でも全く安心できない」といった悲報が相次いだが、本当の意味で受験生が苦労したのは18年度・19年度がピークのようである。
ここ2年(20年度・21年度)は大幅に合格者数も増えてきて明らかにこれまでと様相が異なってきているので、「一般選抜が厳しい」というのはもう過去の話になりつつあるのかもしれない。*2021年度私大入試の解説記事はコチラ
実は大規模私大を中心に合格者数が増えた大きな要因は、主に3月から活発化する追加合格・繰り上げ合格にある。
入学定員厳格化による定員超過のペナルティを避けつつ、できる限りの学生数を確保したい大規模私大に、2月の時点では合格者数を抑え目に出し、手続き状況などを見ながら大学側で人数調整がしやすい追加合格を出して、3月末ギリギリまで学生を確保する方法が定着してきたことが大きい。
さらに、ここ数年の受験生動向を分析し、「もう少し合格者を出せそうだ」と判断した大学が増えたことも合格者数増につながっているだろう。
合格者数を増やしてもなお、定員充足率をわずかに割っている大学も少なくないため、今後も合格者数を増やす流れは続くとみている。
この影響で、これらの大学に入学予定者を引き抜かれてしまった大学も追加合格を出すことが多くなり、全体的に私大合格者数が増えてきたのである。
2月の前期試験である程度の点数を取っておけば、正規合格はできなくとも、3月の追加合格でチャンスを得られるパターンが増えてきたのだ。
昨年度までの傾向として、大規模私大の追加合格の発表は3月中旬頃から本格化し、中には3月30日頃まで追加合格を出す大学もあった。
次回入試では2月入試の段階でもう少し合格者数を増やす大学もあると思われるが、追加合格を出すタイミングは大きくは変わらないだろう。
昨年度は18歳人口減、浪人生数減、またコロナ禍の影響で年内に進路を決定する受験生が多く、一般選抜を受ける受験生が少なかったことも合格しやすい状況になった一因に違いない。
通常、大学入試は前年に志願者数が大きく減ると翌年は反動で志願者数が増えるものだが、今年度(2022年度)入試は必ずしもそうはならないと予想する。
理由は18歳人口の自然減(約2万3000人)、浪人生の減少、そして昨年度に引き続き年内入試が活況であることだ。一般選抜以外の方法で大学に入る人が増えているのだ。
2回目となる大学入学共通テストは、確定志願者数が53万367人となり昨年比ー4,878人となった。特に浪人が4,222人減って2年連続で大幅減となり8万人を割った。一方で現役生の志願率は、過去最高の45.1%になっている(12/7 大学入試センター公表データより)。
この現役生の志願者の中には、年内入試を受けつつ保険で出願をしておいた人も一定数いるであろうから実際の受験者数が読みにくい点も付記しておく。
複数の中堅レベルの大学進学者が多い高校へ聞き取りをした感触では、指定校推薦の人気は変わらず高いそうだ。
また、12月16日時点で豊島継男事務所が調査した総合型選抜を実施した全国145大学の志願者数の指数は104,6で昨年と比べて微増となっている(併願を認めている近畿圏の大学の入試結果が多いので最終結果はもう少し下がる可能性がある)。
この背景には、昨年度(2021年度)一般選抜で志願者数が1万人以下の私大は平均で20%前後も志願者減となったことが要因としてある。
そのため、中小規模の大学の中には指定校推薦の数を少し増やしたり、総合型選抜で合格者数を増やすなど、年内に学生募集を強化する大学が増えたことは間違いないだろう。
一般選抜に関しても、これらの規模の大学を受験する層が少なくなりそうなので(年内入試で進路を決める人が多いから)合格チャンスは充分にあるはずだ。
最後に、今年度(2022年度)の一般選抜における難関私大の動向について少し予測してみたい。これらの大学群の志願者数については、微増する可能性があるとみている。
大きな理由は、本稿の表でも解説した通り、2年連続で合格倍率が緩和されてきていること、そして地方の受験生の出願が増える可能性があることだ。
昨年はコロナ禍の影響で地方の受験生が都心の大学を回避し地元に留まる動きが強かったが、このままコロナ禍が小康状態であれば、地元の試験会場や試験会場に出向かなくて済む、共通テスト方式などの志願者が増えることが予想される。
私見だが、都心私大の授業環境が昨年にくらべてかなり対面授業の比率が上がってきていることもプラスに作用する可能性があると思う。
私自身も秋以降、都心にある多くの大規模私大へ取材で伺ったが、キャンパス内を行き交う学生さんたちの数は明らかに増えている。
また、昨年それほど平均点が低くならなかった上に数年前よりも倍率が下がり利用価値が高まった共通テスト利用方式を使って出願をする受験生が増える可能性がある。
以上が都心難関私大の志願者数が増えそうな理由として考えられそうな要因だが、人口減や年内入試の活況を考えると大幅増にはなりにくいだろう。
また、中堅規模の私大に関しては繰り返しになるが、年内入試を活用した受験生が多い場合、昨年のようにライバルが少なくなり、一定数の追加合格が出る可能性まで考慮すれば数年前に比べて充分に合格チャンスがある。
首都圏にある大規模私大の一般選抜にチャレンジする受験生の皆様はぜひ、本命校に強気の出願をしたうえで確実な併願校も押さえつつ、積極的な出願をすることで合格を目指してほしい。
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河村卓朗(SINRO!編集長)