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かつてない志願者減となった、2021年度私大入試を分析する。

入学定員厳格化の大波は収束方向に?

  • 大学・短期大学進学 2021年 09月22日

入試改革元年となった2021年度の私大一般選抜は数十年ぶりに大きな志願者減となった。

コロナ禍の影響もあり、先行きへの不安感から安全志向に拍車がかかった様相だ。また、旧AO入試から移行した総合型選抜も志願者減となった大学が少なくない。

コロナ禍がいまだ収束しないなか、2022年度の私大入試はどうなるのか? 各種入試結果データを見ながら改めて検証していきたい。

2021年度の私大一般選抜は前年度比85.8%の大幅減に。
専門学校への進路変更も活況?

 入試改革元年となった2021年度の私大一般選抜は大幅な志願者減となった。4月30日までに豊島継男事務所が収集した、全国私大の約95%にあたる557校の志願者総数は322万1470人で、前年度より53万5243人減、指数は85.8、減少率は14.2%だ。

 10%以上の志願者減は1985年の調査開始以来初だという。首都圏を見ると、東京の私大志願者も前年度比13.3%減の指数86.7、128万8096人である(豊島継男事務所調べ)。 

 *2022年度の私大一般選抜に関する予測記事はコチラ

【2022/2/2更新】今から出願できる!首都圏私大情報はコチラ

 首都圏私大の一般選抜志願者減の大きな要因として考えられるのは、中間層を中心に指定校推薦などの年内入試受験者が多かったこと、浪人生の減少による併願校数減(2020年度は現役進学者が多かったことによる)、コロナ禍により地方出身者が都心の大学への進学を敬遠したこと、2月の前期試験で進路が決定した受験生が多く、後期試験志願者が減ったこと(東京の私大の後期試験志願者数は前年度比73.4%の5万4785人。1万9887人減※)、18才人口そのものが前年度比で約2%減となっていることが挙げられるだろう。(※豊島継男事務所調べ)

 ちなみに、センター試験に代わり2021年度から導入された大学入学共通テストの志願者数は53万5245人。現役生(高校等卒業見込者)は前年度比2440人減の44万9795人、対する既卒者(高校等卒業者)は1万9369人減の8万1007人だったことからも浪人生が少なかったことが読み取れる。

 また、総合型選抜と学校推薦型選抜の合否判明後の12月頃から、専門学校に進路変更した受験生が一定数いたであろうことも推察される。例年より早く募集を締め切ったコンピュータ系・建築系の専門学校が複数存在することや、2020年度文科省学校基本調査で専門学校進学率が4年連続で上昇し、過去最高の24.0%に達していることも傍証になろう。

 

大規模校は微減。大きく志願者数を減らしたのは中小規模校

 豊島継男事務所のデータを読み進めて、興味深い事実に気付いた。ここ数年、2016年度からはじまった、入学定員厳格化の影響で合格者数が減少し志願者数が増え高倍率化した大規模私大が敬遠され、中小規模の私大に志願者が集まる傾向があったが、2021年度の入試結果は明らかに様子が違うのだ。同事務所のデータをもとに解説していきたい。

 同事務所がデータを収集した557私大のうち、志願者数3万人以上の大規模校の指数は90.0で全体指数(85.8)より高い数字だ。志願者数1万人以上3万人未満の49校の指数も86.0で全体指数をやや上回っている。つまり、志願者数が多い大学には全体指数よりも多くの志願者が集まっているのだ。

 逆に1万人未満の483校は、2020年度は軒並み指数100を超える人気ぶりだったが、2021年度は一転して非常に厳しい結果だったことが分かる。

 女子大は特に苦戦したようで、首都圏の21女子大の志願者数を平均化した指数は76.4で、前年度比大幅減となった。ただし、好立地で知名度の高い女子大は減少幅が小さい傾向だったことを補足しておく。

■ 2021年度私大一般選抜(大学規模別の指数)
志願者数 集計校数 指数 ()は20年度
3万人以上 25 90.0 (96.1)
2万9,999人~1万人 49 86.0 (95.1)
9,999~5000人 43 78.1 (101.8)
4,999~1000人 159 77.4 (105.8)
1000人未満 281 80.8 (107.5)
  • 豊島継男事務所調べ(2021年5月現在。 全国557私立大学の集計結果より)

 

入学定員厳格化による、一般選抜の高倍率状況は改善傾向に

 大規模校の募集状況に関する具体例として、早慶上智・MARCH・日東駒専の過去3年間の一般選抜の志願者数データを作成した。

 青山学院大学を除く全校が平均指数を超えていて、中には100を超える大学もあることが分かる。このグループにはある程度、志願者が集まったことが推測される。ただし、3年前から2年連続で志願者減となっている大学が多く、入学定員厳格化による志願者数の高騰が収束し、落ち着きつつある点もチェックしておきたい。

 また、2020年度の一般入試から3月にまとまった追加合格を出す大学が特に増えたが、2021年度も大規模校を中心に3月後半に多くの追加合格を出したようだ。

 これは入学定員厳格化の影響によるもので、2月の合格発表では定員数を超えない範囲で「少なめに」合格者を出し、3月に入ってから大学側が数をコントロールできる追加合格で定員数ギリギリまで入学者を確保する方法が一般化してきたものだ。待たされる受験生は複雑な心境だろうが、トータルの合格者数が増えていることは歓迎すべきことだ。大規模校の志願者数が2年連続で大幅に減っているなかで合格者数は増えている。

 この事実を見るにつけ、ここ数年受験生を悩ませてきた入学定員厳格化による、一般選抜の難化も一山越えたと見てよいのではないだろうか?         

■ 2019~21年度入試 早慶上智・MARCH・日東駒専の志願者数推移
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  • 豊島継男事務所・進路企画調べ

 

一般選抜だけでなく、総合型選抜などの年内入試も志願者減

 続けて、入試改革で最も内容が変わった総合型選抜(旧AO入試)と学校推薦型選抜についても少し触れておきたい。

 豊島継男事務所が首都圏130校から集計した両方式(指定校推薦などを除く)の志願者数のデータを見ると、こちらも志願者が減ったことがわかる。なかでも減少幅が大きかったのは総合型選抜である可能性が高い。

 これは、大学によっては旧AO 入試と比べ合格発表が2か月以上も遅くなり、受験機会が減少したことが大きな要因だ。また2020年度入試で高倍率だった大学が多く、このデータを見て二の足を踏んだ受験生もいたのだろう。

 結果的に志願者が減り、2021年度に総合型選抜や学校推薦型選抜にチャレンジした受験生にとっては合格チャンスが増えた可能性が高い。

 2022年度入試では、一般選抜で志願者減が激しかった1万人未満規模の私大については、年内に受験生を集めるために、この両方式の募集人員を手厚くする大学が増えそうなので、思い切ってチャレンジするのも手だ。

■ 首都圏エリア別 総合型選抜&学校推薦型選抜 志願者増減表
  21年度(人) 20年度(人) 増減(人) 指数
東京 45,880 51,765 -5,885 88.6
千葉
埼玉
神奈川
26,018 30,007 -3,989 86.7
  • 2021年5月31日現在。豊島継男事務所調べ。集計大学数130校。
    指定校・付属校入試・帰国子女・留学生・社会人入試などを除く。

 

2022年度私大入試に向けて、SINRO!編集部からのアドバイス

 さて、2021年度私大入試を俯瞰してみると、ここ数年の入学定員厳格化が引き起こした志願者増、合格者減による高倍率化がかなり緩和されてきた印象が強い。また、総合型選抜も予想外の志願者減でねらい目だったようだ。

 2022年度入試でも18歳人口の減少は続くので私大志願者数が減る可能性が高い。この背景を踏まえたうえで、SINRO!編集部から2022年度入試に関するアドバイスを申し上げたい。

指定校推薦一択ではなく、多様な選択肢を!

 気になるのは、最近利用者が増えている指定校推薦についてである。

 ほぼ100%合格する入試ではあるが、本当に第1志望校を選べているのか?という点が気掛かりだ。第2、第3志望くらいまでの大学を選べるのならまだ良いが、消去法で「今の自分でも行けそうな大学」を選んでいるとしたら少し勿体ないように思う。

 前述のとおり、一般選抜は数年前に比べてかなり合格しやすい状況であり、また、年内入試強化の一環として総合型選抜の募集人員を増やす大学も出てきそうだ。

 私見になるが、総合型選抜は志望校に熱意をアピールする入試なので、模擬授業動画などを視聴し、説明会に足を運び、丹念に課題レポートをまとめ面接で熱意をぶつければ、多少学力に自信がない受験生にも合格チャンスがあるのだ。これから受験準備をする高2生にもぜひ覚えておいていただきたい。

入試で絶大な効果を発揮する、英語民間検定は高3の夏までに取得を!

 私大の一般選抜では、英検やTEAP、GTECなどの英語民間検定の成績(スコア)を評価する「英語外部試験利用入試」を導入する大学がここ数年で激増している。この入試の良い点は、大学が指定する英語民間検定で一定の成績を所持していると得点換算や加点の優遇があることだ。

 また、英語民間検定の成績(スコア)の提出を出願条件とする入試の場合、英語力は英語検定の成績で評価され、実際の受験科目は大学指定の1科目という実質的な1科目入試となるパターンもある。英語民間検定の成績(スコア)は出願時からさかのぼって2年間有効とする大学が大半なので、早めに取得しておこう。

 それだけでなく、総合型選抜や学校推薦型選抜で重視される「高校時代の取り組み」に関しても、英語検定のみならず、日本語検定や数学検定などの各種検定資格を所持していると「継続的な勉強や努力ができる人物」であると高評価を得られる可能性が高い。

 「一般選抜は受からない」というイメージは過去の話になりつつあることが各種データから見えてきた。また、総合型選抜の門戸が広がる可能性もある。2022年度入試では、ぜひ目標を高く持って第1志望にチャレンジしていただきたい。

 

2021年度私大入試まとめ
  1. 私大の一般選抜志願者数は全国平均で前年比85.8%と大幅減
  2. 減少が大きかったのは志願者数1万人未満の中小規模校
  3. 総合型選抜、学校推薦型選抜の年内入試も志願者減(指定校推薦などを除く)
  4. 専門学校に進路変更する受験生も一定数存在

 

SINRO!編集長 河村卓朗

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