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ますます2極化が進んだ!? 2023年度私大入試を分析する

人気が続く総合型選抜。一般選抜は4年連続で志願者減!?

  • 大学・短期大学進学 2023年 10月02日

近年、私大入試の2極化という言葉をよく耳にする。

大学の規模により、受験生が集まっているグループと苦戦しているグループの差が広がっているのだ。

そのような状況において、2024年度入試ではどのような大学を選ぶべきなのだろうか。

今春の2023年度私大入試の傾向を分析し、大学選びのポイントを示していきたい。

河村卓朗(SINRO!編集長)

4年連続で志願者減となった2023年度私大一般選抜。
大規模校が堅調だった理由は?

 コロナ禍のもとで3回目となった2023年度私大入試。

 一般選抜における志願者数の集計結果(全私大の85.6%に相当する535校)を見ると、308万1310人で前年比4%減(マイナス12万6930人)、4年連続の志願者減となった(5月19日現在。豊島継男事務所調べ。下図に詳細データを掲載)。

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 大学規模別で見ると、志願者数3万人以上の大学は前年比指数99.4でほぼ横ばい。1万人以上の大学は97.6でこちらは微減となっている。

 3万人以上の大学は2022年度入試では大幅な志願者増だったことを考えると大規模校は引き続き、堅調に志願者を集めていることがわかる。

 大規模校に志願者が集まった要因の1つに、私学助成金不交付基準が緩和されたことが考えられる。

 これまでは私学助成金の不交付基準は、「学定員数(1年次)超過」であったが、2022年10月から「収容定員数(1~4年次)超過」に変わった。この時点で総合型選抜・学校推薦型選抜は入試内容が決まった後であったため、実質的な影響が出たのは年明けからの一般選抜となった。

 2023年度の一般選抜に関しては、過去数年間にわたり入学定員数を割っていた大学が多く、新ルールにより過年度の入学定員の不足分を加算できるようになったため、一般選抜で合格者を出しやすい状況となったのだ。

 ただ、注意が必要なのは2024年度以降、大規模校の収容定員超過率が現行の1.3倍以上から1.1倍以上にまで段階的に厳格化されていくので留年者数が増えるなどした場合、合格者数を絞り込む大学が出てくる可能性もある。2024年度入試に関しては収容定員超過率が1.2倍以上となり、前年度と比べて0.1倍分、絞り込まれることを理解しておきたい。

 

2年連続で志願者減となった大学も多数。
一般選抜は中小規模校にとって厳しい入試に?

 次に志願者数1万人未満の大学の状況を見ていきたい。

 下図によると志願者数9999~5000人規模の大学のうち志願者減となった大学は23校(65.7%)、4999~1000人規模の大学では107校(76.4%)、1000人未満の大学では234校(80.7%)である。5000人未満の大学群は、8割弱が志願者減という厳しい状況が見えてくる。

 2023年3月に学生募集停止(事実上の閉校)が公表された、東京都にある恵泉女学園大学は志願者1000人未満のグループだった。

 この3つのグループの大学は( )内の2022年度の指数でも前年比減となっており、苦戦が続いていることが分かる。特に5000人未満の大学グループは大幅減が続いている。

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 ここ数年で大規模校が合格者数を増やしてきて合格しやすくなり、受験生の併願校数が減ったことや、小規模校を受ける受験生は年内入試を利用するケースが非常に多く、小規模校の一般選抜を受けようという受験生がそもそも少数である、といった要素が影響していると考えられる。

 

一般選抜では「3月入試」の志願者が特に減少している

 首都圏の私大一般選抜を俯瞰すると、2月初旬に入試が行われた「一般前期」の志願者数は指数96.7と微減の範疇に留まる状況だった。

 一方で3月に行われた入試、いわゆる後期試験の志願者数は、東京エリアで指数89.6、南関東(千葉・埼玉・神奈川)エリアは指数85.3でともに10ポイント以上の大幅減であった。(※豊島継男事務所調べ。)

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 この理由は明快で、2月中に合格を果たした受験生が増え、3月まで残る受験生が減ったことに尽きる。

 「3月入試」は2年連続で大幅な志願者減となった。ちなみに、3月入試は中小規模校での実施率が高く、近年の入試では1倍台の倍率の大学も多い。これらの大学を志望する場合、思い切って3月まで粘ってみる方法もある。

 

総合型選抜・学校推薦型選抜(公募制)は
志願者・合格者ともに増加を続けている!

 ここ数年、年内入試を選ぶ受験生が増えていることを裏付けるデータとして、豊島継男事務所が集計した全国の私立大学352校の総合型・学校推薦型選抜(公募制)の志願者数と合格者数を見てみよう。

 2023年度は前年に引き続き、志願者数・合格者数ともに増加している。特に合格者数の伸びが9531人(5.3%増)と大きいため、競争倍率がわずかではあるが下がっている。昨年は325大学の集計値で志願者数は1.9%(7228人)、合格者数は12.8%(2万162人)増加している。

 今年より集計校数が23校少ないため、正確な対比はできないが、全体傾向として志願者、特に合格者数が2年続けて増えていることは確実だろう。

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 総合型選抜のみの志願者数は12万1833人となり、前年比+1万2959人、指数111.9と特に伸びが大きい。出願要件で評定基準を問わない大学が多く、また併願を認める大学も増えつつあるため、受けやすい環境になってきたことが志願者増を後押ししているとみることができる。

 学校推薦型選抜(公募制)に関しては、大学ごとに明確な評定基準などの出願要件が示されている。高校生活の努力の結果ともいえる、評定平均が重要となる入試だ。有名大学を目指して熱心に勉強を続けてきた受験生が多数、受験していることも考えられる。

 最後に、学校推薦型選抜(指定校制)についても少し触れておく。私見になるが、在籍高校で良い成績を収めている受験生が、一般選抜では手が届きにくい有名大学の指定校枠を狙うのは有効な指定校制の活用法だろう(事前調査をしたうえで入学意思が固まった場合)。

 逆に、「どの大学でもいい」などと安易な気持ちで指定校制に走ると、入学後、学びのミスマッチを引き起こし、中退リスクが高まる恐れがあるため注意してほしい。

最新の私大総合型選抜の試験日程一覧はコチラから
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2極化が進行する私大で選ぶべき大学とは?

 これまで解説してきたように、大規模私大には志願者が集まっているものの、中小規模私大では志願者減が続く大学が多い。年内入試も活況かつ合格者数増で倍率も下がり気味と、受験生や高校側としては大学を選びやすい状況ともいえる。

 一般選抜で有名大学を狙う場合、2023年度ほどの合格者数を出さない大学が増える可能性があるが、定員厳格化の影響で合格者絞り込みが厳しかった数年前と比べれば、充分チャンスはある。

 学力に自信がある受験生は積極的に第一志望にチャレンジしていただきたい。

 中小規模校を選ぶ場合は、教育内容だけでなく、経営の安定度を確認するために場合によっては定員充足率なども調べておくとよいだろう。

 弊社が進学行事をサポートする高校で先生方に進路講演をしていると、しばしば「学力があまり高くない生徒でも入学後、伸ばしてくれる大学はないものか?」といった質問をいただく。

 私のおすすめは、高校であまり学習習慣がなかった生徒に対しても、年内入試で合格した後(高3の冬)の時期を活用し、大学で学ぶための準備としてプレゼン・発表の進め方や資料の調べ方などの基本的な指導を丁寧に行ってくれる大学だ。

 この具体例として、「桐蔭プレアド」という桐蔭横浜大学の入学前キャリア教育プログラムを紹介したい。

 総合型・学校推薦型選抜で合格した入学予定者に対して教職員や学生も参加し1月~3月に全7回(昨年実績)の講座を行う。入学前から入学生同士で学び合うことができ、入学後2単位が与えられる。昨年度は合格者の約6割が参加したそうだ。

 プレゼンスキルや資料を調べる習慣は、大学のゼミなどでの発表だけでなく、社会に出て営業職などに就く場合にも非常に重要なスキルになる。入学前・入学後にこのような学習機会が多く用意されている大学をおすすめしたい。

 特に経済・経営分野では、プレゼンや調査発表の準備として、データを用いた資料作りに取り組む機会が多い。今回、取材した同分野に強い産業能率大学東京経済大学もこの点をセールスポイントに挙げていた。

 さらに、企業との産学連携に熱心で社会人から学べる機会が豊富にあり、ゼミなどの少人数教育も充実している大学であればなお良い。

 少人数教育に関しては、女子大も丁寧な教育力を持つ大学が多いのでおすすめだ。特に伝統校は就職に関しても有名企業に強い場合が多い。

 他にも、国策として将来の強化分野に選ばれている「グリーン」「デジタル」分野に関連する学びに強い大学や、士業・公務員・警察官などの特定分野で高い合格実績を上げている大学もいいだろう。

 少子化で労働力不足が進んでおり、「就職率」が高いのは当たり前なので、就職先の中身まで精査したい。

 大学を選びやすくなっている今だからこそ、付加価値の高い大学を見つけてほしい。

 

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⇒『SINRO! no.10』の桐蔭横浜大学産業能率大学東京経済大学を見る

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