「現代教養学環」を新設し、新時代に求められる力を養成する環境を整備
横浜市青葉区にキャンパスを構える桐蔭横浜大学は、「少人数教育」「実践型教育」で知られる大学だ。
法学部、医用工学部、スポーツ科学部の3学部に加え、2023年4月に現代教養学環が誕生。
2022年4月に就任した「教育研究」の専門家である森朋子学長は「これまでの研究成果のすべてを注ぐ」と意気込む。入学前教育やキャリア教育の現状について伺った。
聞き手・構成 河村卓朗(SINRO!編集長)
学生の能力を伸ばす可能性があることをすべてやる―それが、桐蔭横浜大学の基本姿勢です。
本学はアクティブラーニングを評価いただくことが多いですが、それは学びの方法のひとつで、いつ、どこで、誰に……という具合に、学生一人ひとりに対して、「教育の最適化」を行える体制が整っている点が本当の強みだと思います。
私自身、「学習研究」「学習理論」の研究者として、長く教育現場に携わってきました。学長という責任あるポジションに就いた今、教育のプロ集団と共に、これまでの研究成果を実践に移すのが使命だと考えています。
高校時代に自分の能力を伸ばしきれなかった生徒たちの共通点として、「自律的に学習できない」という課題があります。
多忙をきわめる高校の教育現場を考えれば、自律的に学べない生徒はどうしても放置されがちです。しかし、よい大人が積極的に関わり、個別に能力を伸ばしてあげられる環境があれば、彼らの学びの姿勢は大きく変わります。
偏差値だけで、将来を判断するのは早すぎます。彼らには十分なポテンシャルがあるのです。
「桐蔭プレアド」がわかりやすいと思います。これは、総合型選抜および学校推薦型選抜の入学者を対象にした入学前キャリア教育プログラムで、受講は任意になりますが、2023年度入学者は、571名中286名が参加しています。
参加した入学予定の高校生たちは、桐蔭横浜大学の教職員や先輩学生のサポートを受けながら、自分の過去と未来についてまとめ、プレゼンテーションを行います。
目的は自分の言葉で自分について語ること。最初は消極的だった生徒もグループワークなどで教職員や先輩から励まされることによって次第に積極的になり、自信をもってプレゼンテーションができるまでに成長します。
ここで「自分の人生はまだこれから」「私はこれからもっと伸びる」という「成長的マインドセット」を行うことが大切なポイントとなります。
講座は1月から3月の全7回。これは初年次教育の内容を入学前にやるもので、修了者には入学後に必修科目の単位が与えられます。
特徴的なのは、「キャンドルプログラム」だと思います。
これは私たちが「TOIN6」と呼んでいる「考動力」「複眼的思考力」「共感力」「リーダーシップ」「探究力」「自律的キャリア」という6つの力を伸ばすための準正課のプログラムです。正課の教育でも正課外活動でもない、大学を「リアルな現場」として教職員などのよい大人と関わりながら大学の課題解決に取り組むプログラムで、参加学生は、オープンキャンパスや学園祭の運営、学習サポーター、大学の情報発信などに参加することで、授業やゼミとは違う新しい学びを得ることができます。
現代教養学環は、法学部、医用工学部、スポーツ科学部という専門分野に特化した3つの学部が連係協力し、未来社会の構築に貢献できる人材を育成するために設置した新しい教育課程です。
現代社会の諸課題を分野横断的視点で読み解くことを目的として、「地域社会学」「マーケティング学」「国際コミュニケーション学」「心理学」「サスティナブル工学」の5コースを複合的に学び、理論と実践を往還しながら学修することで、課題解決能力を養います。
これは本学の共通教育プログラム「MAST」に用意した体系的な5つの科目群を発展させたもので、はじめは全てのコースを横断的に学ぶことで視野を大きく広げ、各自で見つけた学びのテーマごとにコースを選択します。前出の「TOIN6」と呼ばれる人生と学びの基盤となる力を効果的に伸ばせるプログラムだといえます。
とにかく明るい学生ですね。「もっとこういうことをやりたい」と積極的に発言できる学生たちです。そして、伸びる学生の大半は「桐蔭プレアド」受講者です。入学前に自分について自分の言葉で語った経験は、キャンパスでの積極的な学びにつながります。この学生の成長ぶりは、ぜひ高校の担任だった先生方にも見ていただきたいと思います。
偏差値は高校生の能力のほんの一部を測る指標にすぎません。社会に出てからはテストでは測れない暗黙知、社会情動的スキルこそが大切なのです。本学の教育を通じて、生徒さんの視座を1ステージでも2ステージでも引き上げて、違う景色を見せたいと思っています。
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