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コロナ禍で3回目となる2023年度私大入試を予測する

合格者数の増加は続くのか!?

  • 大学・短期大学進学 2022年 12月05日

ここ2年間の私大一般選抜では、コロナ禍の影響などで受験生の進路決定が早期化し、志願者減となる中小規模の大学が続出している。

一方で、大規模私大を中心に一般選抜の合格者数の増加傾向が続くなど、受験生にとっては歓迎すべき状況だ。

2023年度入試が直前に迫っているが、果たして大規模私大を中心に合格者数を増やす傾向は続くのだろうか?

河村卓朗(SINRO!編集長)

定員厳格化で潤った中小規模の私大に
再び定員割れの影が……

 2023年度私大入試分析に際して、ここ数年の私大入試の大きな動きをおさらいしたい。

 まずは、2016年度入試から始まった、私大における入学定員管理の厳格化(以下、定員厳格化)について触れる。受け入れ可能な入学者数を段階的に減らされ、2018年度以降、収容定員8000人以上の大規模大学は入学定員の1.1倍まで、4000人以上~8000人未満の中規模校は1.2倍までしか入学者を受け入れられないことになっている。

 これを1人でも超過すると補助金カットという厳しい罰則があるため、特に大規模私大の合格者数が大幅に減ることとなった。

 その結果、何が起こったかというと、合格者数の絞りこみにより高倍率化した大規模校に合格できない受験生が中小規模の大学を併願することとなり、中小規模校に受験生が殺到した。それまで定員割れにあえいでいた大学にも受験生が流れてくるようになり、募集状況が大きく改善された大学も少なくない。

 特に、2018年度から2020年度入試まではこの傾向が顕著であった。

 このことを示すエビデンスとして、日本私立学校振興・共済事業団「私立大学・短期大学等入学志願動向」から引用した2016年度から2022年度までの私大入学定員割れ状況に関するグラフを作成した。

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ここ数年の定員割れ私大数の推移から分かることは?

 興味深いことに、定員厳格化がスタートした2016年度から2020年度を見ると、定員割れ大学の数が257校から184校にまで減少している。つまり、2020年度入試までは、前述の定員厳格化による合格者数絞りこみの激化で中小規模校を併願先に選ぶ受験生が増え、その受け皿として募集状況が改善した大学が多かったと推測される。

 ところが、2021年度から再び定員割れ大学の数が一気に増加し、2022年度に関しては2016年度よりも多い284校が定員割れに陥ってしまっている。この2年はコロナ禍の真っただ中にあり、一般選抜そのものの志願者数が大きく減るなど大学にとってはつらい時期でもあった。

 なぜ、定員割れ私大がここまで増えてしまったのか?

 それは、先の定員厳格化で合格者数を絞りこんでいた大規模私大の大半が、ここ数年で合格者数を大きく増やしてきたからに他ならない。ある程度の規模の大学に合格できるようになれば、より規模の小さい大学を選ぶ受験生は減る。いわゆる、定員厳格化が始まる前の状況に戻りつつあることが読み取れるのだ。

 次に、実際に首都圏の大規模校がこの数年、一般選抜でどの程度合格者数を増やしてきたかを見てみたい。

 

首都圏大規模私大の合格者数が大きく増えている!?

 下表に示した「総合私大、過去4年間の一般選抜合格者数の推移」をご覧いただきたい。この表には、2019年度と2022年度を比較して、2000名以上合格者数が増えている首都圏の私大を抽出してみた。

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 まず目をひくのが、1位~3位の日本大学・専修大学・東洋大学だ。

 日本大学は8000人近く合格者数が増えており、専修大学・東洋大学も6000人以上増えている。法政大学は5090人、明治大学で4648人、合格者数が増えている。いずれも志願者数が特に多い人気大学であり、ここ数年でいかにチャンスが広がったかがわかる。

 他にも、中央大学・立正大学・成城大学・武蔵大学・成蹊大学・明星大学・國學院大學なども1500人以上合格者数が増えている。

 ポイントは、年々合格者数が増え続けている大学がとても多いことだ。定員厳格化の当初(4、5年前)は、合格者数を絞りこみ過ぎて定員割れを起こした大学が少なくなかったが、ここ数年は、後述の追加合格などを活用しながら合格者数を増やしているのだ。

 数年前に上のお子さんが私大受験をされたご家庭におかれては、いまは当時と全く違う状況になっていることをぜひご理解いただきたい。

 

追加合格の功罪。
チャンスは増えるが無駄な支出も増える?

 前述の合格者数増に大きく関わってくる追加合格について触れる。

 どの大学も、入学者数を入学定員管理の基準内に収めることが補助金カットを避ける必須条件となっているため、2月の正規合格者はあまり多く出せない。もし予想以上に入学手続者が多かった場合、入学定員管理の基準を超えてしまうリスクがあるからだ。一方で、入学定員数を確保しなければ赤字が4年間続いてしまう。

 そこで、主に3月に入ってから、大学側が人数をコントロールできる追加合格を多く出すことで、入学定員管理基準ギリギリまで入学者を確保する手法が定着してきたのだ。ここ数年の合格者数増の要因は、間違いなくこの追加合格である。

 ただし、受験生からすると、2月に合格が決まった大学よりも志望度の高い大学から追加合格の通知が届き、その大学に入学する場合、最初の大学に支払った入学金が無駄になってしまうという問題が起こる。

 昨今、この問題がクローズアップされ、今年6月になって、文科省が2023年度入試から私大の入学定員管理基準を緩和するという報道が新聞などでなされた。私大受験を考えている方にとって、これは大きなニュースである。

 私は、仮にこの入学定員管理基準の緩和が実施されれば、2023年度の私大入試ではますます合格者数が増える可能性が高いと考えている。しかし、いまのところ文科省から大学に正式な通知は届いていないようである(2022年10月現在)。

 11月以降に文科省から大学に通知が届き、2023年度一般選抜から入学定員管理基準が変わる可能性も否定できないため、参考までに解説しておきたい。

*編集部注:2022年11月末に文科省より各私立大学に入学定員管理基準の変更についての通知が届いたとのこと。

入学定員管理のルール変更で大幅に合格者数が増える?

 私大入学定員管理基準の緩和が、なぜそれほど大きなニュースになるのか?まずは下表を見てほしい。この図に、私大入学定員管理のルールのこれまでとこれからについてまとめた。

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 仮に、定員3000人(1学年あたり。4学年で1万2000人とする)の大規模校のA大学があるとする。現行ルールでは、1年間に受け入れ可能な入学者数は最大で定員の1.1倍の3300人。一方、総定員数はこれを4倍した1万3200人となる。

 A大学が過去3年間、定員100%相当の3000人ずつしか入学者を受け入れていなかった場合、3000×3=9000人が3学年分の在籍学生数となる。今回のルール変更により、この大学は、総定員数1万3200人から過去3年間に入学した学生数9000人を引いた4200人まで、2023年度入試で受け入れ可能ということになる

 現行ルールでは次年度入試で受け入れられる入学者数は3300人までだったので、新ルールでは最大900人も多く入学者を受け入れられる計算になるのだ

 

もともと合格者数が増えているところに、
新ルールでさらなる追い風?

 実際は、いきなり2023年度入試で新定員管理基準のギリギリまで学生を集めると、教室の確保が困難になるなど教学面の質低下を招く恐れがあり、また、合格ボーダーラインが下がってしまう可能性があるため、合格者数を極端に増やす大学はないだろう。

 しかし、大規模校の場合、定員の1.1倍(上記A大学の場合は3300人)を多少超えても、補助金をカットされる心配がほぼなくなるわけで、2月の段階で正規合格者を多めに出しやすくなるのは確かだ。

   本稿では、直近の首都圏における私大入試の大まかな流れを解説した。年々、大規模私大の合格者数が増えており、それに比例して定員割れを起こす中小規模校が増えてきている(ねらいやすくなっているともいえる)。

 また、2023年度入試で入学定員管理基準の緩和が行われた場合、ますます大規模私大で正規合格者数の増加が予想される。追加合格の数は減るのではないだろうか。

 いずれにせよ、昨年度と比べてネガティブな要素はほとんど感じられないので、積極的なチャレンジをおススメしたい。

※2023年度私大入試の解説記事はコチラ

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