「専門学校」と一言にいっても、その教育内容や姿勢、運営方法は学校によって実にさまざまで比較することが難しいのも事実だ。
そこで、今回は長年にわたり高校生に専門学校の選び方をアドバイスしてきた弊社代表・工藤茂樹と、過去に専門学校に勤務した経験を活かした豊富なノウハウを持つ大平稔が、専門学校の選び方、そして生徒一人ひとりにふさわしい学校の見極め方を解説する。
大平 専門学校は、学生がしっかり目的をもって入学して初めて効果がある学校であるといえます。特定の職業に就くために必要な技術や知識を凝縮して学んでいくことになるため、将来どんな職業に就きたいかを、高校生の段階で明確に決めておくことが重要です。
大学は専攻が就職に直結しないこともありますし、入学してから方向性を決める人も多いので、この点が専門学校の大きな特徴だといえるでしょう。
工藤 専門学校は一般教養のような授業が大学に比べて少なく、各分野のプロになるための専門的な授業を集中して行いますので、入学後に路線変更をするのが難しいという点があります。
将来、自分が活躍したい業界や職種を絞り込んだり、こういう資格を取りたいという具体的な目標を定めておくことが大切ですね。
工藤 美容、調理、自動車整備、ファッションなどは、昔からの「定番分野」だといえます。最近では、CGクリエイター、デジタルアニメ制作、さらには高級自転車のデザインなど、時代の変化に応じてさまざまな分野の学校が誕生しています。どちらにしても「手に職」系のものが多い印象はありますね。
就きたい職業が決まっていて、それが国家資格を必要とするものや技術を身につける必要があるものなら、専門学校で学ぶことが夢を叶える近道になる可能性は大いにあります。
大学をめざせない人が受験するのが専門学校なのではありません。成績のレベル云々ではなく、大学とは学び方や将来への歩み方が異なる、進路選択の一つであるということです。
工藤 まず、大学が単位制であるのに対し、専門学校は時間制です。専門学校は1年間に受講しなければならない授業時間数が決められています。
また、国家資格が必要な分野になると、その受験資格を得るための授業時間数も定められています。
大平 それから、専門学校の大半はクラス担任制をとっています。いい意味でおせっかいな先生も多いですし、面倒見のよい先生も多い印象です。
目の行き届く範囲で学生と接していますので、心の移り変わりや授業の理解度、クラスになじめているかどうかまで察知しやすいんです。
専門学校の教員たちは、預かった学生たちをどうやって出口(就職)まで導くか、ということに一番エネルギーを注ぎます。
習熟度が平均より低い学生でも、教員の指導と学生のがんばりによって、公認会計士といった高度な資格を取得できたというケースも少なくありません。
工藤 学び方でいえば、大学では児童心理学や保育についての研究と、それに関する論文作成といった学問的なアプローチが多いのに対し、専門学校は即戦力を身につけることに重きを置いているため、子どもとの遊び方や工作、保護者との接し方など、実践的な学びを重視する傾向にあります。
ですから、保育士という職業を考えるなら、同じ職種であっても、将来どんなふうに働きたいかまで考えておくといいと思います。
保育園か幼稚園か、公立か私立か。働き方や勤務先によって将来的な給与も変わってきますから、まずそこから調べてみるのもいいと思います。
自分がどう働きたいかをまず考え、とにかく技術や知識を身につけて早く働きたい、管理職になるよりも現場で子どもたちとふれあいながら働き続けたいと思うのであれば、専門学校で学ぶのもいいと思います。
また、卒業後に取得できる資格も変わってきます。保育士の資格はどの教育機関で学んでも同じ資格を取得できますが、幼稚園教諭の場合は大学が「保育士+幼稚園教諭一種免許状」、短期大学と専門学校が「保育士+幼稚園教諭二種免許状」となり、それぞれ卒業時に取得できます。
加えて修業年数も違います。大学は4年制ですが、短期大学と専門学校は基本的に2年制が多いため、学費などの負担は大学よりも軽くなります。
工藤 確かに、専門学校は比較するのが難しく、違いがわかりにくいかもしれませんね。
学校選びを誤ってしまうと、専門学校で学ぶ数年間の充実度が変わってくるだけでなく、将来の就職や生き方にも影響してしまう場合があります。誤った選択をしないためにも、これから話す5つのポイントをチェックしていただきたいと思います。*専門学校選びの関連記事はコチラ
(後編へ続く)