各専門8コースから多種多様な研究テーマに取り組む
国際都市・横浜に立地する神奈川大学経済学部。「ゼミの神大」を象徴する50以上のゼミナールを開講しているのが特徴だ。
2026年度には、新たにデータを駆使し、課題解決能力を磨く「経済データ分析学科」を設置構想中。
実際にどのような教育・研究が行われているのか、浦沢聡士教授に話を伺った。
聞き手・構成 河村卓朗(SINRO!編集長)
1年次の必修授業である「経済入門」という授業で、私は学生たちにこんな話をしています。
「経済」という社会システムを、普段の生活で特別意識することは少ないかもしれません。しかし、物を買ったりアルバイトをしたりするなど、経済は日々の暮らしとは切り離せません。
そのなかで、「なぜ景気は良くなったり悪くなったりするのだろう」「なぜ物価は上下するのだろう」といった疑問が浮かぶことがあると思います。そうした問題意識に答えを与えてくれるのが経済学です。いわば、課題解決の「道具」。星をよく見るために望遠鏡を使うように、経済を見るためには経済の動きを解き明かす経済学が必要なのです。
本学経済学部では、この道具を正しく理解し、効果的に使う教育を展開しています。
一番の特色は、扱っている分野が多岐にわたっていることです。8つの専門的な教育課程(コース)のもと、経済理論、歴史、政策、データ、貿易、さらにはマーケティングや企業戦略といった経営・商学的な分野に至るまで、幅広い専門科目を設置しています。
また、時代のニーズに合わせてビッグデータを扱ったりロジカルシンキングを鍛えるといった最先端の科目も用意しています。
特に昨今、データを活用した社会課題の解決やビジネスの創出が加速しているなか、本学部では2018年度より数理・論理的思考力を重視した経済分析専攻を配置してきました。2026年度には、これまでの経験も踏まえ、データ教育をさらに推進する「経済データ分析学科」を新設します(設置構想中)。
ビジネスや行政などの活きたデータを分析し、実践的な学びを展開する予定です。
経済学部では2年次後期からゼミが始まります。特徴的なのは、実践的な機会が非常に多いこと。学内外でのプレゼンや地域社会・企業との連携、ビジネス系・投資系コンペへの参加などがあります。例として、私が指導教員を務めるゼミの活動についてもご紹介したいと思います。
もともと私自身は、行政官として20年にわたってデータを用いた経済政策の企画・立案などに携わってきた背景があり、現在もそうした政策形成に役立てることを目的にした研究活動を行っています。そのなかで、学生とともに取り組んでいるのが「横浜見える化研究」。横浜市と連携し、市の活動状況を捉えるデータを利用し、起きていることを可視化するものです。
例えば、横浜では10年以上前から「待機児童ゼロ政策」が掲げられ、急激に待機児童の数が減少しました。この結果は、市にどんな影響をもたらしたのか──。学生たちは、子育て世代の転入数が同時期に増加していることをデータから発見し、待機児童ゼロとの関係を探りました。
見える化研究から得られた成果は、広く一般にわかりやすく紹介するためにコラム形式で発信しています。
学生たちにとっては横浜市に関するデータという身近な教材を用いて行政の課題解決に取り組むことで、データで社会を見る目を養う機会になります。大学での学びを超えて行政への貢献にもつながるので、研究のモチベーションが高いです。
本学部がある横浜キャンパスは横浜駅から電車で5分の距離にある白楽駅を最寄りとしており、古くから横浜市の企業や行政と連携した教育が実践されてきました。産学官におけるさまざまなプレーヤーの活動地域が身近に存在することで、それらと連携した実践的な取り組みが活発に行われる利点があります。
金融やメーカーのほか、公務員にも多数就職し、幅広い業界で活躍しています。
24万人を数える卒業生が全国にいるためパイプも強く、特に県内の優良企業でも多数の求人をいただいております。
就職課では、各業界を経験したキャリアアドバイザーから就職活動に関する相談のほか、履歴書やエントリーシートの添削、面接指導を受けることができ、さらに進路決定したばかりの先輩からもお話を聞くことができます。
本学部の強みは、社会のニーズを敏感に捉えたうえでカリキュラムを柔軟にアップデートしているところです。2025年度の入試からは、経済データ分析専攻で理系数学と理科で受験することができ、文・理問わず多くの受験生に門戸を開けています。
また、2026年度には新学科を設置するなど、常に「社会や学生にとって真に必要な学びは何か」といった視点を最大限に意識し、そのための研究やプロジェクトの場を用意しています。
経済学の学びは世の中の動きに興味を持つことから始まります。まずは日常生活のさまざまな場面で、疑問や興味を抱いてみてほしいと思います。皆さんが抱いている問題意識に対して、より深く理解するための実践の機会があるので、ぜひ大学に足を運んでください。
神奈川大学 経済学部
浦沢 聡士 教授
1999年に経済企画庁に入庁して以来、20年にわたり、行政官として経済政策の企画・立案や景気判断等を担うとともに、経済分析を行うエコノミストとして政策レポートの執筆、景気分析を中心とした学術的な研究を行ってきた。
2021年より神奈川大学経済学部准教授、2024年より現職。
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