• ホーム
  • 進路コラム
  • 【東京農業大学】人と植物を共存させて街をつくる SDGsに先駆けて発展した造園学とは?
  • 進路コラム
  • スペシャルインタビュー

【東京農業大学】人と植物を共存させて街をつくる SDGsに先駆けて発展した造園学とは?

気候変動対策や生物多様性の保全にも関わる東京農業大学造園科学科の学び

  • 大学・短期大学進学 2024年 12月16日

食や環境、エネルギー、地域創生など、私たちの生活に欠かせない学びを「総合農学」という視点で幅広くカバーする東京農業大学。

そのなかで100年の歴史を持つ地域環境科学部造園科学科では、人と自然が共生した緑豊かな空間づくりのための知識と最新技法の教育に力を入れてきた。

その教育内容や卒業後の多様な進路について、教員の皆さんに話を伺った。

聞き手・構成 河村卓朗(SINRO!編集長)

緑のあるまちづくりのための広範な知識を幅広く修得

―2024年度に100周年を迎えた造園科学科の歴史と学びの特性についてお聞かせください。

荒井 本学科の前身である東京高等造園学校は、1924年4月に日本の造園教育の創始者として知られる上原敬二先生によって開校されました。その1年前はというと、関東大震災が起きた年です。都市を復興するために区画整理やインフラの整備が進められるなか、上原先生は「緑を基盤に街をつくる」という考えのもと、造園技術者の育成のために同学を立ち上げました。

実際に上原先生は、明治神宮の森などを設計し、植物や生物をベースにしたまちづくりを実践してきた方です。日本の造園技術者育成の歩みが、本学科の100年の歴史に刻まれています。

造園といえば庭づくりのイメージが強いかもしれませんが、私たちの役割はその枠に収まらず、緑あふれる持続可能な景観づくりや都市内外における自然再生など多岐にわたります。これは、近年話題に上がるSDGsに先駆けた職種でもあります。

緑のある街をつくるためには、土地の調査や設計から、計画・デザイン、施工、維持管理やマネジメントまで、広範囲な知識や技術が必要。このそれぞれに特化した学校はありますが、余すことなく体系的に一連の学びを得られるのは本学科の強みです。

―貴学科が展開する「環境計画・設計」「ランドスケープ資源・植物」「景観建設・技術」の3分野の教育について、特長をお聞かせください。

福岡 この3分野はコースとして独立しているわけではなく、本学科の全学生が4年間の中で満遍なく学ぶものです。3年次からは研究室に配属され専門を究めることになりますが、基盤となる幅広い知識を身につけていることで、卒業後には強みを活かしながら多様なキャリアビジョンを描くことができます。

まず「環境計画・設計分野」では、庭や公園の計画図や設計図を作成するために必要な製図の演習を行います。1年次の最後には自分の庭を設計する課題があり、学年が上がるにつれて街の中にある公園や広場、都市の中のオープンスペースなどスケールアップしていきます。

そうしたなかで建築や美大との違いは、建物の製図だけでなく、土・水・植物など、都市の自然をデザインし、図面に落とし込んでいく技術を学んでいく点です。

中島 「ランドスケープ資源・植物分野」の学びは、“人と植物をどう共存させて街をつくるか”という視点がベースになっています。まちづくりには土木や建築のアプローチもありますが、私たちの強みは植物を扱うことです。そのためには植物のことを知る必要があり、1年次の初めには約100〜200種の樹木や草本植物を覚える必修授業が用意されています。

また、公園や里山、スポーツ競技場などで植物を維持管理していくために実際にフィールドワークをしながら、植物の維持管理や土壌の調査方法などを学んでいきます。

荒井 「景観建設・技術分野」では、主に施工に関する理解を深めます。設計図から実際にものを作るためには数学や物理の基礎知識が必要で、文系の学生に対しても最初にしっかりとサポートして養成していきます。

また、庭園づくりに特化した研究室もあり、ここでは伝統技法や石材・木材などの材料、保存修復技術などを修得していきます。

福岡 最近では、国の政策の中で、自然の力を活用して都市空間の課題解決を行う「グリーンインフラ」という概念が重要視されています。例えば、大雨による洪水に対しても、街の中に効果的に緑地や土壌を配置することで水を浸み込ませることができ、防災や減災につながるのです。

本学科では水害対策だけでなく、地球温暖化の緩和や生物多様性の課題を都市・地域の中で具体的に解決するために必要な学びを提供しています。

コミュニケーション能力と行動力を大事にしてほしい

―造園科学科を卒業した後の、想定される進路を教えてください。

福岡 一般のイメージと違って、就職の幅はとても広いです。まず、国や基礎自治体の一部では造園職での受験が可能で、まちづくりのための公共政策の立案や、公園の整備、緑地の保全など多岐にわたる仕事に就くことができます。

また、設計事務所に所属し、都市の公園や広場をデザインしたり、戸建住宅やマンションの外部空間であるエクステリアの設計に携わっている卒業生も多くいます。商業施設や室内・屋上の緑化、街の中の自然や緑のマネジメントに携わる職種や、グリーンキーパーと呼ばれる、サッカー場や都市公園の芝生を管理する職種もあります。

本学科からは100年間で約1万2000名の卒業生を輩出しているので、業界に幅広いネットワークがあるのも特徴だと思います。学生の男女比は約50%ずつで、男女問わず業界で活躍しています。

―入試について、受験生にはどのような資質を求めているでしょうか。

荒井 造園科学科は文理融合の学びを展開しているので、数学や物理、歴史などに対して苦手意識を持たずに取り組む姿勢が必要です。

また、造園の仕事は人と人、環境をつなぐうえでコミュニケーション能力が不可欠。加えて、フィールドに出ていく行動力も大事です。自然に癒されたいというよりも、自ら緑を活用して人を癒す空間をつくりたいという意欲がある方に、ぜひ受験していただきたいと思っています。

造園科学科の学びから広がる多様な領域

造園科学科の12,000名を超える卒業生は、ランドスケープデザイン、緑のまちづくり、自然再生・保全、観光まちづくり、花・ガーデン、緑化・造園建設、住宅、インフラ、食と農、健康・スポーツなど、人と自然が共生する都市・地域をつくる仕事で活躍している。

造園科学科の学びから広がる多様な領域
お話を伺った方

東京農業大学 地域環境科学部 造園科学科
中島 宏昭 助教

東京農業大学 地域環境科学部 造園科学科 学科長
荒井 歩 教授

東京農業大学 地域環境科学部 造園科学科
福岡 孝則 教授

⇒『進路の広場』で東京農業大学を見る

ページトップへ
メニュー