2025年度の一般選抜は年内入試の影響と難関校の合格者絞り込みに注意!
日本私立学校振興・共済事業団の最新レポートによると、定員割れを起こしている私大数は令和6年度現在で354校と全体の約6割にまで迫った。
文字通りの「大学全入時代」が迫る今、受験生はどのような大学を選ぶべきだろうか?
そして2025年度私大入試はどのような展開を迎えるのだろうか?本稿で解説していきたい。
SINRO! 編集長 河村卓朗
日本私立学校振興・共済事業団がまとめた「令和6年度私立大学・短期大学等入学志願動向」によると2024年度の学生募集で定員割れを起こした大学数は過去最悪を更新する354校(59.2%)となった。
大学規模別に見ると大規模校には学生が集まっており、小規模校で定員割れが加速している。
近年、新設が相次いでいる専門職大学についても調査をしたところ、全国21大学中15大学が定員割れを起こしており、こちらも厳しい状況が見てとれた。短大に目をむけるとこちらは249校(91.5%)が定員割れを起こすというさらに厳しい状況だ。入りやすい大学、短大が増えている状況と見ることもできる。
弊社(進路企画)編集部では今夏、首都圏私大の中小規模校96校を対象とした過去4年間の学生募集状況についての調査を大学の公開情報ページなどをもとに行った。4年単位で見ると、対象の大学では2021年度頃までは健全な募集状況でそこから徐々に入学者数が減り、2023年度頃から定員割れに陥る学部が増えるというパターンが多く見られた。
2024年度(今春の入学者)の結果についても調査を続けているが、定員割れに苦しんでいる大学が少なくない状況が見てとれる。
この原因の1つとして昨年度、今年度と多くの大規模校が合格者・入学者数を増やしたことが間違いなく影響している。
2025年度入試でもこの傾向が続けば、今はまだ収容定員(4学年分の定員数)では定員割れとなっていない大学でも、いずれ収容定員の80%を下回ってしまい高等教育の修学支援新制度の対象校から除外されてしまう可能性も出てくる。
このような状況をふまえたうえで2025年度の私大入試はどのような状況となりそうかを考えていきたい。
ここ数年、年内入試(総合型選抜・学校推薦型選抜)では総合型選抜に人気が集まり、早期に合格が決まる受験生が増えている影響か、学校推薦型選抜は志願者が微減している。
最近の動向で私が注目しているのは、年内入試(特に総合型選抜)で「併願可」の入試を実施する大学が増えていることに加えて、学力試験で合否を決める入試を導入する大学が出てきていることだ。
今、業界で最も話題を集めているのは学校推薦型選抜で新たに併願可能な「学校推薦入試基礎学力テスト型」を導入した東洋大学。この入試は面接や小論文ではなく、2教科・2科目(英語・国語または英語・数学。英語外部試験のスコアも利用可)の基礎学力テストで合否を決める内容となっている。
さらに大きなポイントは、最終手続き締切日が2025年2月28日となっていることだ。つまり、受験生は年内に東洋大学の合格を確保しつつ2月の一般選抜でより難易度の高い大学を受験することもできるのだ。難関大学の併願校としても選ばれることが多い東洋大学の新入試がどれほど志願者を集めるか?注視していきたい。
また、東洋大学と併願されることが多い大東文化大学も、今年度の学校推薦型選抜で新たに併願可能な国語・英語の2科目で選考を行う「公募制 基礎学力テスト型」を実施する。
総合型選抜では、桜美林大学が昨年度から併願可能な基礎学力方式を実施しており、今年度は関東学院大学が基礎学力評価型(専願方式/併願方式)を新たに実施するなど、こちらも学力を評価する年内入試の導入が増えていきそうな状況だ。
また、年内に受験できる奨学金入試としては12月に実施される神奈川大学の給費生試験が人気だが帝京大学も12月に新たに奨学特待生選抜を導入する。併願可能で最大4年間の授業料等が免除され、入学手続締切日が2025年2月20日ということでこちらも一般選抜組の中から併願利用を考える人が出る可能性がある。
このような流れをうけて来年、学力検査型の年内入試の導入を検討している大学も多い事だろう。いずれ、学力検査型の年内入試は「一般選抜0(ゼロ)期」と呼ばれることになるかもしれない。
今年度の一般選抜は大学入学共通テスト(以下、共通テスト)に新教科として「情報Ⅰ」が加わり、社会の出題科目が再編され、国語・数学の試験時間が長くなるなど、受験生の負担が増えそうな状況ということもあり、首都圏では国公立大学よりも早慶上理やGMARCHを受ける受験生が増えるのではないか?という話を大学関係者や高校現場の方と話していてしばしば耳にする。
注意したいのは、これら難関私大の中にはここ数年間合格者数を比較的多めに出す大学が多かったが、これが続くかどうかである。大規模校は今年度の入試(2025年度)から収容定員の1.1倍までしか学生を採ることができなくなるため、収容定員の1.2倍まで採ることができた昨年度より募集枠が減ることになる。
私は以前のように2月に出す合格者数は控えめにして入学手続き状況を見ながら3月の「追加合格」で調整を図る大学がまた増えるのではないかと予測している。一般選抜で難関私大を受験する方々は長期戦も視野に入れて準備をした方がよいかもしれない。
先ほど触れた東洋大学の「学校推薦入試基礎学力テスト型」を受験する人の多くが一般選抜でより難易度の高い大学を受験する層だった場合を考えてみたい。この人たちが東洋大学に年内に合格し、引き続き一般選抜にチャレンジする場合、東洋大学と同等の偏差値帯の大学を併願校として受験する必要がほぼなくなる。
東洋大学がどのくらいの合格者数を出すかによるが、これらの大学の中には志願者が減るなどの影響をうけるケースも起こりそうだ。
さらに、大東文化大学や帝京大学が新たに導入する年内入試の影響で「大東亜帝国」前後の難易度の大学を一般選抜の併願校に選ぶ受験生が減る可能性もある。2025年度私大入試は一般選抜の2極化がさらに進む、「元年」となる可能性を秘めている。
次に共通テストの動向を見ていきたい。年々志願者数は減っており昨年度(令和6年度)は50万人を割って49万1914人となった。また、「私大受験型」といってもよい1~3科目受験の受験者数の動向が3年連続で減少し、10万5389人となった点にも注目したい。
一方で新課程入試となる2025年度については、2024年10月7日現在の大学入試センターによる速報値をみると志願者数は※48万4568人で昨年比1万9099人増と久々の大幅増となっている。
特に現役生の出願が約5%増えている一方で既卒生の出願が激減していることから、私大一般選抜において約9割の大学が導入している「共通テスト利用入試」の2025年度入試における利用者は増えることになるかもしれない。※10月10日現在の速報値
最後に、私大一般選抜で導入校が増える一方の英語外部試験利用入試について触れたい。
2025年度入試で英語外部試験(英語民間検定)を利用する私大数は※295校となり昨年度から30校増えて全国の50.7%の私大が導入済という状況となった。東京に関しては昨年度から8校増えた73校が実施となり導入率が64.0%となっており、もはや「導入が当たり前」となってきた。次に利用方法について解説していく。※豊島継男事務所調べ
英語民間検定の最大の利点は、多くの私大が得点換算に用いる点だ。一発勝負の独自試験や共通テストと違い、英語民間検定は出願から2年以内に取得したスコア・成績を有効とする大学が大半である。つまり、高2のうちから何回も挑戦できるということだ。
おおまかな話となるが、日東駒専クラスであれば英検2級(1980点)相当のスコアで80点の得点換算が受けられる学部が多い。英語で事前に80点が取れるということは非常にメリットが大きい。結果的に他教科の対策に時間もかけられるなど相乗効果も高まる。
また、英検準2級で70点の得点換算を行っている某大学からは「英検準2級のスコアを提出しつつ、独自試験を受けた受験生の中には50点前後しか取れなかった人も一定数いた」という話も伺い、得点換算を受けられる英語民間検定のメリットはやはり大きいと感じた。
ちなみに難関大学の国際系学部などを受験する際には、出願要件として設定されていることが多いので出願の必須条件となる。
もう充分に周知されていることとは思うが、大学入試において英語民間検定の利用価値は高まる一方のうえメリットが大きいので大学受験を考えている人は高校在学中の早い段階からぜひ準備を進めていただきたい。
最後に本稿のポイントをまとめる。
これらのトレンドに加えて、大学単位でも入試改革を行うケースは多いので志望校の入試要項をしっかり確認してほしい。特に「情報」科目を加えた独自入試を導入する大学もあるので、情報科目が得意な人は初年度は狙い目となる事もあるので積極的に挑戦してみるなど、自分の力が活かせそうな入試を見つけてほしい。