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2024年度私大入試分析&志願者増が続く年内入試を徹底解説!

大規模校の合格者数が減る!? 年内入試は併願可の大学が増える!?

  • 大学・短期大学進学 2024年 11月08日

現行課程で最後の入試となった2024年度入試の結果は?

2025年度入試の傾向は?志願者が増え続ける年内入試の受験対策は!?

高校からの講演依頼で最も多いこれらのテーマについて、実際に多くの高校で講演を行ってきたSINRO!編集長 河村と弊社 進路支援総合研究所所長 新沼が語り合った特別解説の概要をお届けいたします。

聞き手:進路企画 進路支援総合研究所 西浦千穂

第一部 2024年度私立大学入試を振り返る

―まず、最新データをもとに首都圏の2024年度私立大学入試を概観いただければと思います。

河村 大きな流れとして入学定員割れの大学が増えていますね。日本私立学校振興・共済事業団のデータによると、直近の2023年度は全体の53.3%、320校に達しています。受験生から見ると合格しやすい大学が増えているといえます。

入学定員充足率 100%未満の私大データ

新沼 入学定員厳格化で合格者数を絞っていた大規模校(収容定員8000名以上の大学)が、ここ数年合格者を増やす方向に転じています。入学者を容易に確保できる上位校とそれ以外の大学がくっきり分かれ、その分岐ラインが徐々に上がってきている気がしますね。

河村 入学定員厳格化は2016年度からスタート。大規模校では2020年度ぐらいまで合格者数を絞っており、合格しにくい状況が続きました。その影響で大規模校志願者が併願校数を増やしたことにより、入学定員割れの大学が2020年度には31%(184校)まで減少したんです。

しかしその後、大規模校で追加合格者を多く出す手法が定着し、また2023年度には入学定員管理の基準となる数字が入学定員から収容定員に変更されました。4年間で調整しながら入学者を受け入れられるようになり、3月に追加合格を出す大学も大きく減りました。

しかも2023年度、2024年度はこのルール変更の経過措置期間で、大規模校では従来の1.1倍ではなく1.3倍(2023年度)、1.2倍(2024年度)までとなり合格者を出しやすかったんです。それで大規模校志願者の併願校数が減って、中小規模校の志願者減少につながったというわけです。その結果、定員割れを起こす大学が膨れ上がってしまいました。

押さえておきたい、入学定員管理の新ルール

新沼 大規模校の中でもより偏差値の高い大学に合格しやすくなっているようですね。受験生から見れば、一般選抜に向けて一生懸命勉強してきた努力が報われるようになりました。

河村 なお、経過措置は2024年度入試までで、現高3生が受験する2025年度入試以降、大規模校では収容定員の1.1倍以内を基準に学生募集を行うことになります。さらに、新学部構想がある場合にはより厳しく定員管理を行う必要があることも知っておきたいですね。

―では、一般選抜で選ばれる大学と年内入試にシフトしていく大学の分岐ラインはどのあたりにあるとお考えですか。

新沼 偏差値で線引きするなら日東駒専が分岐ラインでしょう。知名度の高いブランド大学には一定のニーズがありますからね。

河村 2024年度一般選抜の志願者数を大学規模別に見ると、志願者を集めたのは志願者数1万人以上の大学が中心で、逆に1万人以下の規模の大学では減少傾向が続いています。この間に分岐ラインがありそうですね。

2024年度私大一般選抜(大学規模別の指数)
―新課程入試となる2025年度私立大学入試についての予測をお聞かせください。

河村 大規模校の収容定員管理基準が2025年度入試から1.1倍と過去2年間と比べて厳しくなることにより、合格者の絞り込みが起きる可能性が高いとみています。追加合格を復活させる大学が増えるなど、一般選抜は長期戦となるかもしれません。

新沼 一定レベルの大学とそれ以外の大学との格差はさらに広がるとみています。ご自身の志望校が年内入試にかじを切っているかどうか見極めていくことも、志望校攻略のポイントになりそうです。

第二部 総合型選抜、学校推薦型選抜のポイント

―続いて総合型選抜、学校推薦型選抜(公募制)の近年の傾向や今後の展望についてお話しください。

河村 総合型選抜を導入している私大数は近年90%を超えており、特に首都圏では志願者が大きく増加しています。更にそれ以上の幅で合格者が増えており、倍率が下がって受けやすくなっていますね。偏差値帯で中下位の私立大学では、他校との併願を可としたり募集定員を増やしたりと志願者確保に向けた動きが加速しています。

設置主体別「総合型選抜」導入率

新沼 一般選抜との併願を可とする大学も出てきました。これを利用すれば年内入試で一定程度の大学の合格を確保しつつ、一般選抜で大本命に挑戦できますね。東洋大学が学校推薦型選抜で併願可能で面接がない、学力テストのみの入試を関東圏大規模校として年内に初めて導入することも話題となりそうです。

河村 併願を認める大学が増えているのは年内入試のトレンドともいえる動きで、2025年度入試でもこの傾向は続くでしょう。7月上旬頃から公開される各校の入試要項をチェックしてみて下さい。また、入学手続きの最終締切を2月末とする大学も出てきています。もともと総合型選抜は何か1つのことに突出して優れた学生をとる試験でしたが、時代とともにさまざまな形に変化してきてますね。

新沼 国公立大学では後期試験が総合型選抜にスライドしたパターンが多く、もともと後期試験ではその学科に突出した学生をとるというコンセプトが強かったんですね。それが総合型選抜に継承されたわけですが、今でもそのような考え方が残っているのは国公立大学やごく少数の私立大学だけです。

なかには、定員確保のためだけにやっているのでは?と疑いたくなるほど簡単な試験を行う大学もあります。試験内容が二極化していて、その分岐ラインは先ほどの一般選抜の分岐ラインよりもやや低い位置にあります。定員確保の問題が試験内容にも影響しているんですね。

河村 一方、偏差値も知名度もそれほど高くない大学でも、学科の内容に沿ったレポートやプレゼンテーションを課すなど、入念な準備が必要となる試験を実施する大学もあります。このような試験を行う大学であれば、入学してからも志の高い仲間とともに好きな分野を思い切り学べそうです。簡単な試験に安易に飛びつくことなく総合型選抜に真剣に向き合えば、本当にやりたいことが明確になり、より自分に合った進路が見つかるでしょう。

2024年度 私大総合型&学校推薦型選抜(公募制)志願者数と合格者数の推移
―年内入試の提出書類や試験内容で印象に残った大学があれば教えてください。

新沼 慶應義塾大学の2000文字以上で自己PRというのは非常にいいと思います。あと、年内入試による入学者の質がいいと感じるのは桜美林大学。試験問題がしっかり作られていて、入念に準備してきた受験生が合格しています。理工系分野では東京都市大学の“原子力人材入試”などもユニークですね。

河村 産業能率大学では、文部科学省の「令和4年度大学入学者選抜における好事例」にも選ばれた“キャリア教育接続方式”など特徴的な試験があります。一般選抜でもスマートフォン持ち込み可で出されたシナリオに沿って課題解決案をまとめる“未来構想方式”を実施しています。いずれもその分野を本当にやりたい人なら楽しく取り組めそうですね。そのほか、玉川大学も受験生と大学の相性を丁寧に確認する試験を行っていると思います。

また、最新ニュースとして神奈川県内の13の私立大学が学校推薦型選抜の推薦書の書式を統一することは、高校現場の業務負担を軽減する素晴らしい取り組みだと思います。

―総合型選抜・学校推薦型選抜(公募制)を目指す生徒を指導する高校の先生方にアドバイスをいただけますか。

河村 部活動や生徒会活動など目立った実績が必要と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。入学後に何をしたいかがより重視されているんです。先生方には、やりたいことをしっかり言語化できるような訓練を生徒に促してほしいですね。また、日頃の様子から生徒それぞれのよい面を見出し、適性をアドバイスいただければと思います。

新沼 先生方が最も苦労されているのは、志望理由書の文章構成に関する指導でしょう。その学問に興味を持ったきっかけだけでなく、そこから何を考え、何を得たか、それを踏まえて具体的にどう行動を起こすかが非常に重要です。

看護学部を目指している生徒なら、「看護体験に参加してみたら?」「あなたが理想とするのはどんな医療?」「そういう医療を実現するために大学で何を学びたい?」「学んだことを将来どう生かしていきたい?」といった具体的な声かけをしていただくと、志望理由書の内容や面接での受け答えが飛躍的によくなると思います。

河村 もう1つ、読書を勧めていただきたいですね。たとえば看護学部なら『看護入門』、経営学部なら『ビジネス入門』といった入門書に目を通しておけば、面接で話す内容に深みが増すでしょう。また、学校推薦型選抜(公募制)で大学が指定する課題図書を読んで面白いと思えれば、その学部・学科は自分に合っていると判断できますよね。

新沼 読書は非常に重要ですね。本を読み、その内容を咀嚼して理解するという経験がなければ、相手に伝わる文章を書くのは難しいですから。

―ところで、チャットGPTを使った志望理由書を認めるか、認めないかといったことが話題になっていますね。

新沼 チャットGPTの能力は非常に高く、使いこなせればとてもいいツールです。ただし、検索条件によって文章の質が変わってくるので、丸写しすると大学の先生方に容易に見抜かれてしまうでしょう。材料集めに活用する程度にとどめておくべきだと思います。

河村 大学のチャットGPTの取り扱いを見ると、情報系学部の多くは使用可で、むしろ最新のリテラシーだから使うべしという考えのようです。仮説を立てる際、外堀を埋めるのに有効に利用して、仮説自体は集めた情報をもとに自分で組み立てなさいという方向性でしょう。

―第二部の最後に、学校推薦型選抜(指定校制)を選ぶうえで注意点があればお聞かせください。

河村 「行きたいけれど一般選抜ではハードルが高い」と感じている大学の推薦枠があるのなら、利用するとよいでしょう。「楽だから」という安易な理由で選ぶのはお勧めしません。

また、校内選考とのスケジュール調整ができるなら、併願を認めている大学の総合型選抜を上手に活用して、「最初から指定校」ではなく選択肢を多く持つ受験戦略があってもよいのではないかと思います。

新沼 指定校制で受験するなら、自分で大学のことをしっかり調べて行きたいと思える大学を選んでほしいですね。

―締めくくりとして、高校の先生方が持っている情報の量や質が進路指導を左右すると思いますが、先生方はどこまで頑張ればいいのでしょうか。

新沼 基本的に先生方は頑張らなくていいと思います。受験情報誌や予備校、我々のような教育関係の企業などを使って情報収集されればよいでしょう。生徒が進路を自分で決められる環境を作り、十分な情報をもとに指導していただきたいですね。

河村 私も同感です。より的確なアドバイスができるよう多方面から情報を収集し、今の流れをつかんでおいていただきたいと思います。弊社WEBサイトでも入試日程やオープンキャンパス情報など、受験に役立つさまざまな情報を提供しています。ぜひご活用ください。

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お話を伺った方 写真 (写真左)
河村 卓朗 SINRO!編集長
教育系出版社に20年在籍後、2018年より現職。
大学・高校教員・生徒・保護者向け講演なども多数行う。
モットーは「わかりやすく」。
(写真右)
新沼 正太 進路企画 進路支援総合研究所 所長
大手予備校で講師管理、校舎長などを歴任。2020年より現職。
共通テスト・一般選抜・推薦入試などの分析、講義を幅広く行う入試のスペシャリスト。
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