人気分野とこれからねらい目な分野は?
5年目を迎えた専門学校の分野解説特集。
今年も伝統校の先生方から学校選びに役立つ貴重なお話をいただきました。
本稿では、専門学校の分野解説に関する「まとめ」として、過去7年間の学生数から各分野の最新の募集状況を解説していきたいと思います。
河村卓朗(SINRO!編集長)
文部科学省の学校基本調査によると、令和5年度の専門学校進学率は前年と比べて0.6%減の21.9%となり2年連続で微減となりました。私立大学の定員厳格化問題が落ち着き、大学に入りやすくなっている状況がその一因かもしれません。
実際に本稿でグラフ化して取り上げた16分野の過去7年間の学生数の推移を見てみるとここ数年、入学者数が減っている分野が複数あります。また一方、ここ数年で大変な人気となっている分野もあることがわかります。まずは人気分野を解説していきましょう。
分野別学生数のグラフで平成29年度から令和5年度までの推移をみてみると、情報処理、デザイン、美容、動物分野が6年前と比べて大きく伸びていることがわかります。
まず、情報処理分野が伸びている背景には大学においてもここ数年、同分野(情報・データサイエンスなど)の人気が続き、新学部の増設ラッシュが起きていること、さらに国もこの分野の学部新設に補助金を出すなど支援を強化していることがあります。
専門学校で情報処理を学ぶ利点はPCなどの実機を使った実習機会が豊富に用意されていることです。入学後に初めてPCに触れる文系の入学者を手厚く指導してくれる学校を選べば即戦力の人材となれるでしょう。
デザイン分野に関しては「ゼロから構想し形あるものを創る」ことへの注目度が社会的に増えていることが考えられます。コチラの分野も多くの美大が3年連続で志願者増となるなどブームがきており、デザイン思考の習得を目指す受験生が増えているようです。
美容分野に関してはコロナ禍の影響をほぼ受けず、この3年間も順調に入学者が増えています。これまでは業界定着率が低いことなどが問題になりがちでしたが、業界全体として美容師の待遇改善に力を入れる企業や店舗が増えたこともここ数年の人気の要因といえそうです。
最後に動物分野ですが、こちらはズバリ、愛玩動物看護師の国家資格化がブームを牽引しています。特にこの3年は右肩上がりで学生数が増えています。ただし、専門学校によって犬などの動物を相手にした実習の体制は異なりますので1人あたり何頭の犬を担当させてくれる学校なのか?などを調べると良いと思います。
次に専門学校ならではの分野をみていきましょう。
コロナ後の巻き返しに期待がかかる音楽、ホテル・ブライダル分野や専門学校の花形分野ともいえる、調理分野は近年減少傾向にあります。しかし、飲食やホテル・レストラン業界などではコロナ禍の影響がだいぶ弱まり、求人も活発化しています。
また、製菓・製パン分野はここ数年横ばいでしたが、こちらも求人は好調なので今後、就職に関して困ることはなさそうです。
コロナ禍の数年間はコンサートの開催ができなくなるなど、大きな影響を受けた音楽(エンタメ)分野は2023年には業界として過去最高益だった2019年を超える業績をあげてV字回復を果たすなど、急速に復活しています。この分野ではコンサートスタッフやグッズなどの開発・企画、放送技術、音響、動画制作など多岐に渡る領域で人材が求められています。
同じくホテル業界と関連が深い旅行分野の学生数を見ると、ここ数年でかなり減ってしまっていますが今はインバウンドなどの猛烈な追い風もあり、急速に業績が回復しています。ブライダルに関しても対面型の結婚式が復活するなど、業績が上がっています。そのため、コロナ期間に退職した社員の補充が追い付かない企業も多いなど、求人は活況のようです。これらの分野はコロナ前の勢いを取り戻しているとみてよいでしょう。
次にここ数年、横ばい、または微減となっている保育士・幼稚園教諭、自動車整備、栄養、スポーツ分野に目を向けてみます。
まずスポーツ分野ですがオリンピックイヤーだった令和2・3年は1万人の大台を超えましたが、直近の2年は少し減少しています。しかし、心配するほどの減少ではありません。
保育士・幼稚園教諭分野については令和5年の減少幅が少し気になります。この分野を選ぶ際には、卒業と同時に幼稚園教諭二種免許と保育士資格を同時に取れる「指定認可校」をぜひ選んでいただきたいと思います。
栄養分野に関しては5000人前後を推移していますが、高齢化社会を迎えて栄養士、特に医療への貢献が期待される管理栄養士のニーズがさらに高まりそうです。就職に関しても関連業界から引く手あまたの状況が続いています。
最後に自動車整備分野ですが、この分野は100年に一度と言われる変革期にきています。自動運転やセンサーなど、最先端のコンピュータ技術が結集された自動車のシステム点検である「特定整備」ができる人材になるためには教育ノウハウのある自動車専門学校での学びが欠かせません。今のうちに最新の自動車整備に関する知識を身につけることで幅広く活躍できる人材になることができるでしょう。
最後に、医療分野をみていきます。
診療放射線分野はここ数年横ばいです。大学卒と比べて1年早く現場にでられるのが専門学校で学ぶ魅力といえるでしょう。
高校生から人気の高い、理学療法・作業療法分野は2年連続で学生数が減少しています。これは大学で同分野の学部新設が増えていることも関連しているかもしれません。しかし、依然として3万人台をキープしており高い人気がうかがえます。
また、看護分野も近年は大学で学部新設が続いている影響からか、減少傾向にあります。
医療系分野で近年、人気となっているのは歯科衛生分野です。
コンビニの数より多い歯科医院で口腔内クリーニングなどの業務に従事できる歯科衛生士の価値は高く、たとえば出産後もパートなどの形態であれば求人数は大変多くあります。また、家族で転勤などになっても歯医者は全国どこにでもあるので一生仕事に困らない資格です。受験生からコスパの高い国家資格というイメージで支持を集めているのかもしれません。
ここまで学生者数と社会的な動向から各分野の状況を解説してきましたが、コロナ禍の影響を受けて苦戦した分野の関連業界も昨年あたりから業績が大きく回復している点はおさえておきたいところです。また、ここ数年人気を集めている分野はしばらく堅調に学生が集まりそうです。
どの分野を選ぶにしても数多くある専門学校の中から確かな教育力のある学校を選んでいただきたいと思います。そのためにも、本誌の分野解説記事で取り上げている「各分野のポイント」をぜひチェックしてください。