~併願可、学力検査型など、多様化する総合型選抜~
年々、利用者が増えている総合型選抜。
最近では併願を認める大学が増加していますが、学力検査型を導入する大学も出てくるなど入試方式も多様化しています。
本稿では総合型選抜のトレンドについて解説していきます。SINRO! 編集長 河村卓朗
ここ数年、出願に際して推薦書や評定がいらない大学が多いことなどから「総合型選抜」で大学進学を選ぶ受験生が増えています。文部科学省の「国公私立大学入学者選抜実施状況」データからも、総合型選抜で入学する受験生が増加の一途をたどり、対して一般選抜での入学者は減少していることが見て取れます。
この流れに歩調を合わせるかのように近年、多くの中堅レベルの大学や地元密着型の小規模私大が総合型選抜に力を入れ始めています。
具体的にいうと、総合型選抜の募集人員増、入試回数増、併願を認める方式の増設、学力検査型の導入などの施策を取る大学が増えてきています。受験生にとっては受けやすい入試が増えているともいえるでしょう。
大学入試の方式は、「総合型選抜」「学校推薦型選抜」「大学入学共通テスト」「一般選抜」の4種類に大別され、それぞれに特徴があります。
このうち総合型選抜とは、2020年度入試まで「AO入試」と呼ばれていた方式です。2021年度入試から名称が変わり、出願期間も8月以降から9月以降に変更されました。
また、AO入試は「学力以外」を重視する傾向にありましたが、総合型選抜は「学力型」「対話型」「実技型」に大別されるといわれています。前述のように「学力」を重視する大学が増えており、以前は専願が基本でしたが、最近は併願を認める大学も目立ってきました。
総合型選抜の入試日程を調査していると、併願可能な入試を実施する大学が近年、特に増えている印象があります。たとえば、弊社「総合型・学校推薦型選抜データベース2024」によると、首都圏の2025年度入試で併願可能な入試方式は372件ありました(8/5日現在)。
実際に当サイトの検索機能で「併願可能」をチェックいただき、さらにエリアや分野などを絞って検索いただくと、より具体的な情報を得ることができます。ぜひお試しください。
*ちなみに、学校推薦型選抜に関しても併願を認める大学が一定数ありますのでご確認ください!
学力検査型の総合型選抜については、昨年あたりから導入実施校が出始めました。桜美林大学や今年から導入する関東学院大学、共立女子大学などが具体例として挙げられます。
昨年から学力検査型の総合型選抜を導入した桜美林大学の高原入学部長によると、学力検査型の入試を導入した背景には、コロナ禍のなかで受験生(昨年・今年の高3生)が充分に課外活動を行うことが難しい面もあったため、学力を評価する入試も加えて多様な受験生にマッチするように工夫したそうです。地道に勉強を続けてきた受験生向きの入試といえるでしょう。
また、学力検査型の入試に関しては、面接がある大学と無い大学があります。面接がある大学の場合は、しっかり準備をしていただきたいと思います。
ちなみに、「学校推薦型選抜」では東洋大学が新規導入する「学校推薦入試 基礎学力テスト型」が関東エリアの大規模私立大学では初の「年内から学力検査のみで受験できる入試」ということで業界の話題となっています。この入試の最終手続き締切は2025年2月28日なので、年内に東洋大学の合格を得つつ、2月に一般選抜で他大学受験も可能となります。難関校を目指す受験生にとっては利用価値の高い入試となりそうです。
これまで面接や書類が主流だった総合型選抜においても、学力をしっかりみる入試が加わることで新たに総合型選抜や学校推薦型選抜といった「年内入試」を受ける受験生が増えるかもしれません。いずれにしろ、早い段階からバラエティーに富んだ入試が増えることは、受験生にとって悪い話ではありません。
ただ、進路決定が早期化するということは、早い段階から志望校に関する考察を深めておく必要があるということです。高2の段階から大学について見て・聞いて・考える機会を増やしておいた方が良いでしょう。夏と春に多数開催される、大学のオープンキャンパスなどで見聞を深めておくことが大切になります。ぜひ、足を運んでみてください。