チーム医療教育を追求する、昭和大学保健医療学部の新たな取り組みを解説
医系総合大学の昭和大学は、2023年4月より、保健医療学部にリハビリテーション学科を新設した。
既存の理学療法学科と作業療法学科を統合することで、双方の専門領域に精通した優れた医療人材の育成を目指すという。
同学科の加茂野有徳先生(理学療法学専攻)と三橋幸聖先生(作業療法学専攻)に、その学びの特色について話を伺った。
聞き手・構成 河村卓朗(SINRO!編集長)
加茂野 これまでの理学療法学科と作業療法学科を統合し、理学療法学専攻と作業療法学専攻からなるリハビリテーション学科を新設しました。
この改組により、両者がより密接に連携して学べるカリキュラムとなりました。象徴的なのが、必修の共通科目群として導入された「リハビリテーションの科学」です。両専攻の学生は4年間を通してともにリハビリテーションの概念や目的といった基礎を学びます。
臨床実習の時期も調整し、両専攻で連携して行えるようになりました。
三橋 今回の学科改組の目的には「リハビリテーション専門職」としての視点を明確に持つ理学療法士と作業療法士の育成があります。本学科では、自身の専攻を越えてリハビリテーションを本質から学んでいきます。
実際の現場では、理学療法士と作業療法士が連携して支援にあたることも少なくありません。チーム医療の現場に即した学び合いによって、優れた医療人材として活躍できることを期待しています。
三橋 両専攻がともに学ぶ科目によって、リハビリテーションへの共通理解が深まりました。また他職種を理解することは、自分の職種の役割を体系的に捉え直し、掘り下げていくことにも繋がると思っています。
加茂野 両専攻で共通の授業や演習を通して、相互的な議論がこれまで以上に活発になりました。こうした交流は、学生が入学以前に抱いていた理学療法や作業療法に対する先入観を打ち破り、視野を広げる効果もあると感じます。
加茂野 そもそも理学療法士は、運動療法や物理療法によって身体機能や運動能力を維持・改善します。一方で、作業療法士は日常生活に関わる活動を「作業」として捉え、作業療法を用いて社会生活能力の回復を目指します。
本学のリハビリテーション学科では、それぞれの専門性を磨きながら、その両方のアプローチと視点を学びます。
三橋 理学療法も作業療法も、患者さんを中心とした全人的な医療支援を行うことは共通しています。実際の現場では、「歩けるようになりたい」「料理がしたい」といった患者さんの想いや目標達成に向けて、双方が連携できることが理想です。
リハビリテーション=訓練ではありません。患者さんの自己実現に向けて、個性や価値観に寄り添った様々な支援を実践していく姿勢が重要です。
加茂野 医学部、歯学部、薬学部、保健医療学部の4学部連携による「チーム医療教育」に取り組む昭和大学では、学科連携にも力を入れています。
たとえば、リハビリテーション学科には1年次から看護学科とともに学ぶ機会があり、看護師の視点や役割も知ることができます。理学療法士や作業療法士と看護師が理解し合い連携をとれることは、患者さんの安心感にも繋がります。
三橋 学部・学科連携のプログラムで各職種の学生と交流して培われるコミュニケーション力は、患者さんの個性に寄り添い、その人らしい生活を支援するうえでも重要になってきます。
三橋 昭和大学が推進するチーム医療教育の基盤として大きな役割を持つのが、富士吉田キャンパスにおける全寮制の初年次教育です。ここでは学部の異なる4名の学生が共同生活を送るため、他学部との交流が自然と生まれます。
リハビリテーション学科の1年生もここで学び、医・歯・薬・保の壁を越えてチーム医療に必要なそれぞれの視点や役割を理解していきます。
加茂野 昭和大学では、チーム医療教育を目的とした「学部連携PBLチュートリアル」を導入しています。これは4学部混合グループで行う課題解決型学習で、保健医療学部では1年次から3年次にかけて取り組みます。特に3年次では「学部連携病棟実習」で病棟の入院患者さんを担当するなど、現場での連携を体感できます。
一般的に現場に出てから数年かけて身につけていくチーム医療の感覚を、在学中から段階を踏んで体得できるのが強みです。
昭和大学保健医療学部では、一般選抜入試Ⅰ期の正規合格者全員に特待制度として、初年次授業料全額105万円を免除する給付型の奨学金制度が設けられている。
2023年度入試から、リハビリテーション学科の2専攻で、総合型選抜入試、学校推薦型選抜入試の合格者全員も特待制度として制度を拡充した。
三橋 昭和大学の建学の精神は、「至誠一貫」。これは常に相手の立場に立って真心を尽くすという意味で、理学療法と作業療法の現場でも大きな意味を持ちます。
今後もそのマインドを持つリハビリテーションのプロを育てていきたいと考えています。
加茂野 8つの附属病院で多彩な実習を受けられることや、臨床教員制度によって、附属病院で働く理学療法士や作業療法士から高度で実践的な指導を受けられるというメリットもあります。加えて、少人数の学科・専攻の特徴を生かして、国家試験や就職活動に向けて手厚いサポートを受けられるのも本学科の魅力です。
なお令和9年度には鷺沼キャンパスを新設予定です。2~4年生はこの新キャンパスで学ぶこととなります。
時代のニーズに対応できるチーム医療実践者としての第一歩を、ぜひ昭和大学から踏み出してください。
昭和大学 保健医療学部 リハビリテーション学科
理学療法学専攻
加茂野 有徳 先生
昭和大学 保健医療学部 リハビリテーション学科
作業療法学専攻
三橋 幸聖 先生
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