次世代人材を育成する「ひらめきプログラム」の狙いと高大接続の取り組みに迫る
2009年に武蔵工業大学が改称して、誕生した東京都市大学。
2023年4月にデザイン・データ科学部が新設され、現在は8学部18学科で文理融合の多様な学びを展開している。
そんな東京都市大学が力を入れるのが、次世代人材を育成する通称「ひらめきプログラム」。菅沼直治入試センター部長に、同プログラムの狙いやそこに紐付く入試制度について詳しく伺った。
聞き手・構成 河村卓朗(SINRO!編集長)
2022年6月に発表された政府の「教育未来創造会議」の第1次提言では 、日本が抱える人材育成を取り巻く課題として、「デジタル人材の不足」「諸外国に比べて低い理工系の入学者」などが挙げられています。そして、目指すのは、「予測不可能な時代に必要な文理の壁を超えた普遍的知識・能力を備えた人材育成」と記されています。
これはまさに東京都市大学が目指す教育の方向性と合致したものと考えています。
東京都市大学は、東京都心にある理工系大学のなかでも「文理融合」や「学際領域」の教育・研究を積極的に行っている大学です。理工学部、建築都市デザイン学部、情報工学部、環境学部、メディア情報学部、都市生活学部、人間科学部に加え、2023年4月からデザイン・データ科学部が加わり、全8学部18学科体制になっています。
従来の理工系分野だけでなく、情報、環境、メディア、都市生活まで幅広いテーマをカバーしているところが特長です。
新設のデザイン・データ科学部では、最近話題のデータサイエンスの知見を活かした分析力を用いて、新しい「もの」「こと」を創造できる人材を育成するのが目標です。今回の入試では多くの受験生が集まり、学びの拠点となる横浜キャンパスには、新たな活気が生まれています。
2021年度から日本の次世代を担う人材を育成する新カリキュラムとして注力している「ゲームチェンジ時代とウェルビーイングな社会を切り拓く『ひらめき・こと・もの・ひと』づくりプログラム」(以下、「ひらめきプログラム」)のことです。
2021年度から理工学部の3学科でこの「ひらめきプログラム」をスタートし、2026年には全学部学科での展開を目指しています。
「知識集約型社会」とは、モノよりも知識や情報が価値を持つ社会のことです。ここで求められるのは、文理横断、分野融合による全体最適解的思考アプローチです。
まさに、冒頭の「教育未来創造会議」が求める学びを先行しており、東京都市大学が全学的に目指す教育の姿でもあります。「ひらめきプログラム」で、知識集約的な思考を身につけた学生は、次世代の「社会変革」を担う人材になっていくでしょう。
すでにプログラムが始動している理工学部3学科のカリキュラムを少しだけ紹介しましょう。
まず各学科の卒業要件124単位を満たしながら、「ひらめきプログラム」も修了できるように設計されています。履修する科目群は、「ものづくり」「ひらめきづくり」「ことづくり」「ひとづくり」の4カテゴリーに分かれており、それぞれの資質を伸ばす授業が展開されています。
これに加え、「AI・ビッグデータ・数理データサイエンス」科目群がしっかりと併走しているのが、理工系大学ならではの強みといえます(下図参照)。
「ひらめきプログラム」は、女子学生の選択率が高いのも特徴で、女子学生のうち約6割がこのプログラムに参加しています。 仲間とワイワイ議論しながら、アイデアを形にしていく学び方は、女子向きなのかもしれません。
理工学部機械工学科、機械システム工学科、電気電子通信工学科で実施しているカリキュラム例
これは6月から8月にかけて、学内で行う高大接続型イベントで、参加する高校生に探究問題を提示し、その後、キャンパス内で探究ワークの機会を提供します。
最終的に学生や教員の前で成果発表も行います。これは高校の「探究」の授業をサポートする狙いもあります。さらに、本学の総合型選抜出願にもつながるように設計されています。
2022年度は162名が参加し、135名が本学を受験。うち60名に合格を出すことができました。初年度としては、今後に期待できる成果だったと考えています。
「ひらめきプログラム」に接続する総合型選抜として「学際探究入試(理工系)」があります。これは理工学部で実施する入試で、人気のある「ひらめきプログラム」への参加が確約されます。
選考方法は調査書、志望理由書、小論文のほか、「探究総合問題」を課します。これは特定の教科・科目に限定されずに思考力・判断力・表現力を評価する総合的な問題です。東京都市大学の入試サイトで、サンプル問題を公開しています。
2023年度から一般選抜でも「探究総合問題」と大学入学共通テストのスコアで評価する「一般選抜(前期理工系探究型)」を実施し、今回の入試でも継続します。
共通テストの指定する2教科の合計と「探究総合問題」の合計で評価する方式で、こちらも「ひらめきプログラム」への参加を確約しています。
高校の「学習」と大学の「学修」は学びの方法論や分野が大きく異なります。例えば、「工学」という学問分野は高校には存在しないわけです。だからこそ、「オープンミッション」のような高大連携プログラムを利用して、高校時代から大学の学びに触れる機会を持つようにしてください。
高校の現場の皆さんにも、ぜひ大学のリソースを積極的に活用していただきたいと思っています。
東京都市大学
菅沼 直治 入試センター部長
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