3年目となる共通テストの出題傾向に変化はあるか?
3年目を迎える大学入学共通テスト。
新学習指導要領の対応を2年後に控える過渡期のなか、出題傾向に変化はあるのだろうか?
共通テスト直後に毎年、教科別の分析レポートを発信している弊社、進路支援総合研究所の新沼所長が、主要教科ごとのポイントについて過去2年間の出題分析を行い、どのような出題傾向になりそうかを予測・解説する。
新沼正太(進路企画 進路支援総合研究所所長)
センター試験で公言されていた平均点6割のラインは、過去2回の共通テストをみる限り、継承されているようだ。施行調査でも平均点5割程度を目標としており、一部教科を除けばほぼ想定通りだったはずだ。
前回(2022年度)テストでは、数学の平均点の大幅ダウンにより全体の平均点も低くなったが、その他の教科はおおむね5〜6割の得点率を維持している。よって、今回(2023年度)テストでは数学は多少の難易度低下が予想されるものの、他教科は過去2回を踏襲すると考えるべきだろう。
つまり、大きな変化はないと判断し、受験生には過去2回の過去問題と追試験問題をしっかり研究してテストに臨むようお勧めする。次に教科ごとの解説をしていきたい。
過去2回のテストでは、読解中心の定番ともいえる内容だった。さまざまなシチュエーションを英語で読み解き解答させるという趣旨のもので、図が挿入された問題などが出題される傾向は変わらないだろう。したがって、対策としては語彙力アップが最も重要な要素になる。
また、リスニングに関しても、英語を母語としない話者が含まれる状況、1回読みが出題の半数以上を占める状況に変化はないものと思われる。早期からさまざまな英語を聞く訓練や、民間の英語検定の受験などを主な対策として挙げたい。
人物を登場させる、図を読み取らせるなど、単に式を書いて答えを導き出すという従来の問題とは異なり、国語的要素を含む問題が定着したとみている。具体性から抽象性への流れを作るなど、公式の暗記だけでは対応できない部分、問題の文章量が多く時間内の処理が難しい部分がポイントとなるため、このあたりを意識して学習してほしい。
前回の平均点が低かったことから、ある程度の改変はあるだろう。具体的には、文章量の若干の削減、誘導の追加などにより、処理時間の短縮に向けた改善がなされると予想される。
しかしながら、もともと共通テストの数学においては、記述式問題の出題(思考・判断・表現をみる)を目的としてきた背景がある点に注意が必要だ。これについては、過去2回の出題で方向性が定まってきた可能性が高いため、形式に変化はないだろう。
前々回、前回を踏襲した形になると予想される。大幅な変化はないと考え、過去2回の問題についてしっかり研究してほしい。
現代文、古典ともに定石通りの出題となっている。複数の文章(題材)を組み合わせて思考力・判断力をみる問題は、今回も出題されると考えるべきだろう。施行調査では実用文の出題があったが、今回あるとすれば、評論文と組み合わせて出題される可能性が考えられる。
しかしながら、平均得点率が55〜60%と安定していることを考えると大幅な変化は考えにくい。複数の文章(題材)を扱う問題が出されることを念頭に置いて準備するようお勧めする。複数の文章(題材)に実用文が含まれる可能性は十分ある。
両教科ともセンター試験の時代から、問題文に人物の会話を提示し、資料(グラフ)を読み取って解答するという、脱暗記をねらったともいえる傾向があった。共通テスト移行後も、理科では多少高度な計算力を求める傾向がみられるが、大きな方向性は変わらない。共通テスト実施決定後のセンター試験と比較しても、大幅な方向転換は感じられない。
思考力や判断力が求められる問題が増えてきているものの、まずはセンター試験の最終年度も含めた過去問題に取り組み、問いの形式を理解する訓練を積んでおこう。
日頃の学習においては、基本事項の確認とともに、そのテーマで扱っている資料の確認を怠らないことが、両教科の攻略のカギとなるだろう。総じて難易度の変化はないと推測する。
今回、および次回の共通テストを受ける受験生にとっては、大学入試センターが考える「思考・判断・表現」が各教科でどのように解釈されているかを見極めることが、このテストの攻略につながると考えられる。出題については平均点からその傾向が語られることが多いが、成績上位者の得点率はさほど変化していない。
結果的には、暗記ではなく、記述(説明)問題への対策を怠らなかった受験生がより高い得点を得ている。
日頃から、「なぜそうなるのか」、「相手にどう伝えるか」を考える訓練をしておけば、具体的事象を一般化するような形式の出題にも対応できるだろう。過去問題に取り組む際には、その点に着目してほしい。
現高1生については、学習指導要領改訂による影響が多少なりともあるだろう。しかし、学習範囲以外は、センター試験から共通テストへの移行時の変化とテーマは同じと考えてよいだろう。言語能力の向上と文化への理解は、今の受験生が直面している入試改革の核となる部分である。
また、理数指導(STEAM教育)の強化を意識した観察・実験など、科学的探究をめざす学習活動やデータ分析についても、共通テストにその方向性があらわれている。学習範囲の変化により対策すべき内容は異なってくるが、問いの方向性はあまり変化しないと考えられる。
繰り返しになるが、日頃から「なぜそうなるのか」、「相手にどう伝えるか」を考えることが受験対策にもつながる。そのような意識をもって各教科の学習に取り組んでほしい。