昭和大学保健医療学部が追究する学部連携教育と全寮制初年次教育
「超高齢社会」を迎えた日本において、医療従事者の育成は国家レベルの課題だ。
なかでも看護師、理学療法士、作業療法士など、医師と連携しながら医療現場を支える人材の役割がますます重要になっている。
キーワードは「チーム医療」。看護師、理学療法士、作業療法士がより連携しながら学ぶ環境が求められている。
「医系総合大学」である昭和大学保健医療学部の鈴木久義学部長に医療人材育成の最新動向を聞いた。
聞き手・構成 河村卓朗(SINRO!編集長)
昭和大学は、医学部、歯学部、薬学部、保健医療学部の4学部6学科を擁する「医系総合大学」です。4学部が連携して「チーム医療」を学べる実践的なカリキュラムを展開している点、さらに8つの附属病院で多彩な実習を受けられる点が本学の特徴といえるでしょう。
対面での実習にこだわる一方、コロナ禍を機に、授業のICT化も積極的に進めています。大教室で行う授業をオンラインに移行するだけでなく、アクティブラーニング形式の演習をオンラインで行ったり、医療現場と同じ設計の病室を学内に用意して、シミュレータを使った実習を実施したりもしています。
富士吉田キャンパスでの全寮制の初年次教育は、50年以上の歴史があります。ここでは、学部の違う4名の学生が同じ部屋で共同生活をします。つまり、医学部、歯学部、薬学部、保健医療学部の学生が同じ空間を共有しながら学ぶのです。
富士吉田キャンパスでの初年次教育は、感染管理体制を十分整えた上で、コロナ禍の期間も継続しています。学生たちは共同生活によって、医・歯・薬・保健医療の学部の壁を越えて、相手の立場に興味・関心を持つようになります。
保健医療学部の学生にとっては、医学部の学生も一緒に暮らせば同じ目標を持つ仲間であることがわかります。私はこういう原体験によって、「チーム医療」の基盤が築かれると思っています。
「チーム医療」の学びは、全学部の学生がそれぞれのタイミングで経験します。保健医療学部の学生は、主に1〜3年次に「チーム医療」を学ぶ授業が組み込まれています。
1〜2年次の「学部連携チーム医療PBL」などがその一例です。これは4学部混合グループで、提示された課題について討論・発表を行う課題解決型学習です。ここでは4学部の学生が1チームとなり、「認知症の高齢者のひとり暮らし」といった具体的なケースについて、さまざまな立場から議論し、自分なりの考えを発表します。
その後、3年次になると4学部混合の学生グループで附属病院の入院患者の事例をもとに具体的なケアプランを検討する「学部連携病棟実習」などを経験していきます。これは「医系総合大学」ならではの授業だと思います。
保健医療学部は、これまで看護学科、理学療法学科、作業療法学科の3学科で構成され、学科の壁を超えて強く連携した教育を展開してきました。2023年4月からは、理学療法学科、作業療法学科がリハビリテーション学科に統合され、両者がより密接に連携した学びを展開していく予定です。
ここで、理学療法士と作業療法士の違いについて、少し説明しましょう。まず、理学療法士はリハビリテーションのプロで、国家資格の職業です。主に運動療法、物理療法などを行うのが仕事です。一方、作業療法士は、身体や精神に障害を抱えた患者さんの社会生活能力の回復・発達をサポートする仕事です。こちらも国家資格の職業です。
昭和大学の保健医療学部では、これまでも両者を志す学生が協働しながら学べる環境をつくってきました。実際の現場においても理学療法士と作業療法士が連携してケアプランを考える場面は多く、実践力を鍛える機会になっています。新たにできるリハビリテーション学科には、理学療法学専攻と作業療法学専攻を設ける予定です。
看護学科では、看護師課程、保健師課程(学内選抜)を用意し、理論と実践の両面から「人間」を深く理解した看護のスペシャリストを育成しています。他大学の看護学科との大きな違いは、8つの附属病院で手厚い実習サポートを受けられる点にあります。ここで頼りになるのが、「臨床教員制度」です。これは、附属病院の臨床現場で働く看護師が教員として学生の指導を担当してくれる制度で、実習中の学生に関する細かい情報を共有しながら進められる安心感があります。
この制度は学科共通のもので、理学療法士、作業療法士の臨床教員もいます。彼らは教育職員として採用され、最先端の臨床のプロとして、現場で教育指導に従事しています。
コロナ禍で医療現場の仕事にますます注目が集まっています。現場は常に人材不足で、本学への求人数も増加傾向にあります。私はこの学部で、昭和大学の建学の精神である「至誠一貫」、つまり相手の立場に立って真心を尽くせる医療従事者を育成したいと思っています。
保健医療学部の全学科では、「数学」の代わりに「国語」を選択できる選抜方式も実施しています。リハビリテーション学科には、初年度授業料免除になる特待制度もあります。ぜひ昭和大学から医療人への第一歩を踏み出してください。
昭和大学保健医療学部では、一般選抜入試Ⅰ期の正規合格者全員に特待制度として、初年次授業料全額105万円を免除する給付型の奨学金制度が設けられている。
2023年度入試から、リハビリテーション学科の2専攻で、総合型選抜入試、学校推薦型選抜入試の合格者全員も特待制度として制度を拡充した。
昭和大学保健医療学部
鈴木 久義 学部長
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