「歯科衛生」と「看護」を両方学ぶ神奈川歯科大学短期大学部の教育連携
神奈川県南東部の港町・横須賀に歯学部と短期大学部、附属病院を置く神奈川歯科大学。
「愛の精神の実践」を建学の精神に創立し、100年以上の伝統と実績をもとに医療人を養成している。
短期大学部の石井信之学長は、「全国の病院で今、多職種間の連携が重要度を増している」と語る。歯科衛生学科と看護学科を擁する短期大学部が実践する教育連携について詳しく話を伺った。
聞き手・構成 河村卓朗(SINRO!編集長)
神奈川歯科大学歯学部歯学科と、短期大学部歯科衛生学科、看護学科は、横須賀の同じキャンパスに設置されています。この環境を活かして3学科間で密接なつながりを構築することで、医師や歯科医師、看護師といった他分野の専任教員から受講できる教育環境を整備しています。
こうした教育連携が実現するのは、医療人としての可能性の広がりです。歯科衛生学科の学生は歯科治療だけでなく全身疾患に関する知識を身につけ、看護ケアを実践できるようになります。同様に、看護学科の学生は口腔疾患に関する知識を修得し、口腔ケアを実践できるようになるのです。
多職種間の連携がますます重要性を増す現在の医療現場では、こうした他分野の知識を持っていることが大きな強みになります。
歯科衛生士というと歯科医師のアシスタントとしてのイメージを持つ方が多いかもしれませんが、歯科治療の準備や補助だけが歯科衛生士の仕事というわけではありません。
近ごろは総合病院や大学病院で働く歯科衛生士が増えており、そこでは患者さんの口腔ケアに携わります。近年、口の中を清潔に保つことは全身疾患の予防と治療にも関連することが明らかになっています。特に高齢者の場合は「食べる・飲み込む」ことが年齢とともに衰えてくると、QOL(生活の質)の低下に加えて肺炎や術後感染などのリスクも高まるため、口腔ケアは非常に重要な役割を担うのです。
一人ひとりの患者さんがどのような病状で入院しているのかを理解するために、歯科衛生士にとって全身疾患の看護ケア知識や看護師との連携は必要不可欠です。
看護師についても同様で、口腔ケアの知識は大きな強みになります。なぜ咀嚼がうまくできないのか、飲み込むことが困難なのか……そうした知識は、口腔衛生学を学んでいないと得られないものです。
神奈川歯科大学歯学部と併設する本学の看護学科では、歯学部の教員から直接、専門分野の授業を受けることができます。ですから、本学は国内で唯一、口腔ケアの知識と技術を持つ看護師を洗練して育てることができる環境だと自負しています。
こうした人材は、今後ますます求められるようになるでしょう。
まずひとつは、大学が母体であることを含め、実習先が充実していることが挙げられます。
歯科衛生学科は、神奈川歯科大学附属病院と横浜クリニック・横浜研修センターで最新の医療設備環境での実習が可能です。成人歯科や小児歯科、障害者歯科といった各歯科専門外来の先進歯科治療を学べ、内科などの医科もある環境で、多職種連携を肌で体感することができます。
看護学科は、本学が位置する三浦半島内の約70の施設(2021年度実績)と連携して臨地実習を行っています。病院以外にも訪問看護ステーションや高齢者施設、保育園など実習先は多岐にわたり、自分に合う環境を見つけられるのが特長です。
また、両学科ともに「コミュニケーション」を重視した教育科目を設置し、患者さんや各医療職とのコミュニケーションやチームワークを図るための素養を身につけてもらっています。サークル活動などで歯学部の学生と関わることもでき、そうした交流が就職後の多職種連携にも活かされるはずです。
国家試験の合格率は歯科衛生学科が100%(2022年3月)、看護学科が89.3%(2022年3月)で、教職員全員で合格に向けてサポートしています。求人倍率は歯科衛生学科が14.6倍、看護学科が12倍と非常に高く、超高齢社会でますます活躍の場が広がっていく職種であることは間違いありません。
加えて、将来の選択肢のひとつとして考えてほしいのが「ケアマネージャー(介護支援専門員)」をはじめとする社会福祉の職業です。介護サービスの計画を立てるプランナーであるケアマネージャーになるためには、保健・医療・福祉に関する国家資格保有者として5年以上の実務経験が必要です。
歯科衛生士や看護師からケアマネージャーの道に進む人も多く、ダブルライセンスで活躍する人材を輩出するのも本学の使命だと思っています。歯科衛生士や看護師は育児期間などで休職しても復職がしやすいため、生涯を通じて社会に貢献できる職業だと思います。
資格さえ持っていれば即戦力で活躍できる時代もありましたが、超高齢社会に直面する現在の日本では、専門分野以外の面でも確かな知識と技術を持ち、多職種間で連携してチーム医療に取り組むことが医療のプロとして欠かせない基礎力になっています。
医学、歯学、看護学が密接に連携された本学の学びで、これからの時代に必要な医療人の育成に貢献したいと思っています。
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