生産〜加工〜流通・ビジネスまで現場で学ぶ実践型の経営学とは
「食料」「環境」「地域創成」など時代のニーズに合わせた学びのテーマで、近年は文系の受験生からも注目を集める東京農業大学。
多彩な学部・学科の中には、北海道の大自然の中で実践的に地域創成や商品開発について学べる学科もある。
今回は、北海道オホーツクキャンパスにある生物産業学部自然資源経営学科にフォーカスし、文理融合の学びの現場について同学部の佐藤史郎教授に話を伺った。
聞き手・構成 河村卓朗(SINRO!編集長)
東京農業大学生物産業学部は、北海道の網走市にあります。
網走は自然豊かで、環境と人間の共生を考えるには最高の場所です。周辺には広大な農場や牧草地が広がり、冬にはオホーツク海の流氷も楽しめます。
そんな北海道オホーツクキャンパスにある生物産業学部には、4つの学科があります。
オホーツクの陸圏の動植物をリアルに学ぶ「北方圏農学科」、オホーツク海の謎を解き明かすことで水産物の未来を考える「海洋水産学科」、オホーツクの生物資源で健康と美をつくる「食香粧化学科」、オホーツクの自然資源を活かした環境共生とビジネスを学ぶ「自然資源経営学科」です。
いずれの学科も教育理念である「実学主義」のもと、北海道の大自然をフィールドに、1年次から積極的に研修・実習を行っています。
網走というとだいぶ遠いというイメージを持つ方も多いと思いますが、最寄りの女満別空港まで関東圏から100分、関西圏から125分で着きます。成田空港、関西国際空港からLCC(格安航空会社)の便もあって、最安値の時期は1万円で往復できることもあります。
農学は「生命」「食料」「エネルギー」「環境」「地域創成」などのテーマを幅広くカバーする総合科学です。
生物産業学部では、生物産業に関する「生産」「加工」から「流通・ビジネス」まで体系的に学びます。そこでは、経営学のような社会科学系の学びも不可欠です。
そんな「農学」を背景にした文理融合の学びの拠点となるのが、「自然資源経営学科」です。ここでは経営の視点から自然環境と人間の共生を考えます。
他の文系大学の経営学部・学科との大きな違いは、オホーツクという大自然を舞台に地域創成や商品開発について実践的に学べることです。
例えば、1年次の必修科目「自然資源経営学実習」では、知床や阿寒湖で体験型学習を行います。その後、3年次まで続く選択科目「自然資源経営学実務演習」で、知床の自然環境の保全と観光振興をどのように両立するのか、エゾジカと人間の共生をどう実現するのか……など、さまざまな課題に取り組みます。
現在、エゾジカの肉を使ったラーメンを開発して、市内の飲食店で提供している学生もいます。
このような実習を通じて学生たちは、自然資源を活かした「環境共生」と「ビジネス」を実践的に学んでいきます。
生物産業学部の学生は9割が道外出身者で、そのうちの半分以上が関東圏の出身者です。
新入生たちは、一人暮らしや友達づくりなど、ゼロから新生活をスタートします。だからこそ、学生同士で自然と会話が生まれます。演習や実習などを通じて、また部活やサークル活動に関わることで、確実に友達の輪が広がっていくのは、オホーツクキャンパスならではでしょう。
さらに、近隣の農家や漁港でのアルバイトを通じて、他学科の学生や地域の人たちと交流しながら、「社会性」を身につけられるのも大きな特徴です。特に地域の特産品であるホタテ漁を手伝うアルバイトは有名で、ここでも生産〜加工〜流通の流れを学ぶことができます。
首都圏とはまったく違う環境、さらに学生のほとんどが一人暮らしということで、「国内留学」のような生活といえるかもしれませんね。
生物産業学部では、10月と12月に総合型選抜を実施しています。
これら2つは、書類審査(調査書・自己推薦書・事前課題)と口頭試問(面接)に基づいて行われます。出願にあたっては、評定平均の基準を設けておりません。「北海道の大自然で学びたい!」「北海道で夢を実現したい!」という強い意志のある受験生を求めています。
就職先は、農業、メーカー、流通、サービス業、輸送関係、金融業、公務員など実にさまざまです。
とりわけ約4割の学生が農業・食関連分野の企業に就職しています。誰もが知る大手企業からの求人も毎年寄せられています。学生たちがオホーツクの大地で身につけた多様性、自主性、社会性に基づく「人間力」が高く評価されているのだと思います。
自然豊かな網走にあるキャンパスで、活き活きと学ぶ先輩学生たちと直接話していただきたいですね。
今年のオープンキャンパスは7月30日、31日、8月27日。道外からの参加者には、1組2万円の交通費を補助します。8月6日・7日の世田谷キャンパスのオープンキャンパスにも、生物産業学部は参加します。この機会も、ぜひご利用ください。
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