2年目を迎える、共通テストの傾向予測と注意点をまとめた。
昨年度、初の共通テストをむかえるにあたり、過去の試行調査からどのような出題が考えられるかを論じたが、実際に1年目の共通テストが実施され、平均点は過去のセンター試験とそれほど変わらないという結果となったのは記憶に新しいところだ。
共通テストの直後から問題解説の速報を公開するなど、新入試制度に着目してきた進路企画進路支援総合研究所として、1年目の共通テストを総括しつつ、2年目の傾向予測と注意点をまとめてみる。
昨年度(2021年度)からスタートした共通テストについて、事前に行われた試行調査からトピックスとなったポイントを整理する。
試行調査からうかがえた大きな変化のポイントは…
などが挙げられるであろう。国語と数学ⅠAの記述式問題は試験直前の昨年12月に見送りとなった。このことが国語と数学の作問に少なからず影響を与えた可能性もある。
そのような中で実施された初年度の共通テストは、文章の読解力とデータを読み解く力が必要とされる入試であると予想されたため、私たちは国語力(読解力)を強化することをポイントとして挙げた。
実際に行われた昨年度の共通テストの問題解説の詳細については弊社公式Webサイトをご覧いただきたいが、簡単にまとめると、事前から予想された通り、問題文の長文化や暗記だけでは解けない問題内容の増加が見られたものの、平均点は一昨年度までのセンター試験とそれほど変わらず、大幅に難化して平均点が下がるだろうという、事前の予想とは異なった。
では、2年目となる次回の共通テストはどうなるか、本稿で予想をしてみたい。
大学入試センター理事長によると、共通テストの問題は実施の2年前には作成できており、そこから調整をしていく流れであるとのことだ。
実際に1年目の共通テストにおいて記述式の見送りが決定になったタイミングは、実施直前の12月(英語検定見送りは11月)であったことから、ほぼ修正の時間がないまま本番を迎えることになったと推測できる。
すなわち、ここでの変更(記述式見送り)を受けて急遽調整の必要が生じた「国語」と「数学」に関しては、記述の設問部分を削除して対応したであろう(すなわち理想からは外れた内容になった)ことが推測される。
2年目に際してこの部分を修正し、理想に近い形に変えてくるのではないかと予想している。具体的には次のような内容が気になる。
方針として「論理的な文章、文学的な文章、実用的な文章を複数組み合わせて出題」とあったが、昨年度の共通テストでは従来の「評論文」と「小説」の出題となった。
直前に記述問題の見送りと併せて、試験時間の変更(20分短縮)があったことから、実用文で記述式の問題を作成していたものを削除し、評論文の一部にアリバイづくりのため複数の題材となるように設問に挿入しているのではないかと疑いたくなる問題であった。
2年目は方針に沿って実用文を用いた問題を出題してくるのではないかと推測できるので、受験生は対応策を考えておいた方がよいと思われる。
数学ⅠAにおいても記述式問題が削除されたが、こちらは試験時間の変更はなかった。時間的に余裕がある設問構成となったため比較的取り組みやすい内容となった可能性がある。
記述に時間がかかる想定であれば、その分、計算量を削減し調整した問題が存在したはずだからこの部分をさらに強化して出題してくるだろう(計算量の増加)。
問題量の減少はないと考えられることから、より計算スピードの向上がテーマになる可能性がある。
もちろん、具体的な事象に関する考察的な問題は継続して出題されると考えてよいだろう。
昨年度は、生物とその他の試験に得点調整が入った。得点調整は頻繁に起こることではなく、センター試験においても数回実施されたのみで、好ましいものではないため難易度調整が行われる可能性が高い。
試行試験でも見られた実験や観察の問題は多く存在したが、生物ではそれらを用いて計算力を問う問題が少なかったため、その部分を多くして調整してくる可能性がある。
また、昨年度は見送られたが、選択肢の中から「すべて選べ」という設問を設定し、より難易度を上げてくることも十分考えられるので、実験や観察時に根拠やそのプロセスを意識して取り込んでおくことがポイントとなると考えられる。
2回目となる次回の共通テストは、直前で様々な変更があり対処せざるを得なかった初回と異なり、しっかりと理想の問題をつくり上げて出題してくると予想される。
今年度の対策としては試行調査の問題を確認し、対応できるようにしておくことをお勧めする。
理想は「試行調査」であり、初年度を参考に考えるというよりも、理想とされている問題を参考に対策を立てていくことが2年目の共通テストを攻略する上でのポイントとなると考える。
そもそも共通テスト導入の根幹にある「学びの3要素」を測定するという目的を忘れずに対策を行い、高得点を目指して欲しい。
2021年度に導入初年度となった大学入学共通テスト。
実際に解答するだけでなく、プロの予備校講師を高校に招聘し、問題解説及び学習法を伝授します。
別会場への移動の手間などもなく、授業時間内に組み込むことも可能です。
新沼正太(進路企画進路総合研究所所長)