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いまさら聞けない?大学入学共通テストのポイント

  • 大学・短期大学進学 2021年 01月07日

2021年度入試から導入される大学入学共通テスト(以下共通テストと記載)ですが、当初の計画からかなり様変わりをしてきており、きちんと整理されないまま入試を迎える受験生もいるのではないかと思います。


本稿では、そもそもこの共通テストがどのようなコンセプトで行われることになり、結局どのような変化が起こり、そしてどのような対策が必要なのかを整理してお伝えします。

(進路総合研究所長 新沼正太)

結局、センター試験から何が変わったのか?

 いよいよ本番が近づいてきた共通テスト。結局、センター試験の時と何が変わったのかといえば、目に見える形のものは以下の2点となっています。

  1. 英語配点の変更
    (筆記200点+リス50点 ⇒ 筆記100点+リス100点)
  2. 数学ⅠAの時間変更
    (60分 ⇒ 70分)

 これを見るとリスニングの配点が高まったのでリスニング重視になったという点となぜか記述式を導入しなかったのに数学の時間が増えたという点だけがこの入試改革という、まさに「骨抜き」の内容に見えてしまうかもしれません。実際にはこれは共通テストへの変更の一部であり本質は別にあるのですが、マスコミ等で報道された部分は目に見える変化だけだったため、そのように感じる方も多くいたのでしょう。

試行調査の内容から見える、共通テストのポイント

 今回の共通テスト実施にあたり、大学入試センターは試行調査を2度(H29、H30)実施しています。この試行調査は新たに始める共通テストの問題自体が適正に運用できるものか(時間・問題レベルなど)を判断するために実施されたのですが、この問題を見ることで共通テストの本質が見えてきます。

 各教科におけるセンター試験との相違点等を以下に示します。

 

 英語  配点は筆記:リス=100:100に変更。試験時間に変更はなかった。
筆記においては、今までセンター試験で定番だった「発音アクセント」や「文法・語法問題」が消え、読解問題だけで構成、設問文が日本語から英語に変更されるなどの変化が見られた。また全般的に語彙力を必要とする問題になっている。
リスニングでは1回読みと2回読みが混在する形で出題。配点の増加だけでなく難易度も高くなっている。

 

 数学  数学ⅠAの時間が10分増加。記述方式はなくなった。
全般的に日常生活の場面で考える数学となっており、会話を通じて問題を読み取るなど今までの数学と比較しても珍しい出題となっている。下の図を確認してほしいが、明らかに文字数が増加していてかつ図などが挿入されていることがわかる。このことにより問題ページ数が1・5倍に増大しており、長い問題文をスピーディーに読むことを要求されるようになった。

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図:センター試験と共通テスト「数ⅠA」の試行問題

 

 国語  従来通りの現代文2問、古文1問、漢文1問の構成。現代文の記述方式はなくなった。
出題方法としては論理的な文書・文学的な文書・実用的な文書などを複数組み合わせた問題を出題するとなり、実用文として資料(ポスター、条文など)から読み取るものが加わるとともに単一題材で問題を構成するのではなく、複数を組み合わせる問題となるのでより手間がかかる(時間変更なし)内容となっている。

 

 理科  探求活動に基づいた問題が出題され、日頃の実験や観察の経験が生かされる設定の問題が多い。会話文形式で課題を発見し解決までのプロセスを題材にした問題や「すべて選べ」という出題も見られ時間や手間がかかるものとなった。試験時間の変更はないが、各教科とも問題ページ数が大幅に増加している。

 

 地歴公民  史料や図版、地図、グラフなど様々な資料を使った読解力を必要とする問題が多く出題されている。それにより、問題冊子のページ数が大幅に増加しており、今まで以上に手間がかかる問題が散見される。また連動型の設問形式も見られ基礎知識だけでなく、思考力・判断力を問う問題になっている。

 

各教科とも読む文章量が増える傾向なのに試験時間は同じ。求められる力は…

 このように各教科とも読むべき問題の文章量が増える方向であるのに対して、試験時間の変更はないという点が特徴として挙げられます。すなわち、「文章の読解力」と「データの読解力」が特に必要とされる入試となっているのです。

 書く・聞くということがクローズアップされていますが、共通テストへの変更の本質は「国語力(読解力)を全教科で問う」というものです。

 単に知識の整理だけでなく、その知識を構成している周辺の知識やなぜそれが起こったのかなどの理解が重視されているので、教科書だけでなく資料集なども見ておくことが必要です。

 

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