文系科目だけでも受験できる東京農業大学!―SDGsの17のゴールを網羅する幅広い学び
生物、食料、環境、地域創成、エネルギーなど、農学がカバーする学びの領域が社会的に注目を集めている。多くの人は、「農学=理系」というイメージを抱きがちだが、最近は文系の学生でも学べる領域が増えている。
2021年に130周年を迎える伝統を持つ農学の名門、東京農業大学では現在、6学部23学科のうち、4学部10学科で文系科目のみの受験が可能だという。
入学した文系学生は、農学の専門領域を問題なく学ぶことができるのだろうか? 小林順入学センター長に入試や入学後のサポートについて詳しく伺った。
東京農大では現在、6学部23学科のうち、4学部10学科で文系科目のみの受験が可能です。最近はWEB相談などで「文系なのだが農学を学びたい」と相談を受ける機会が増えています。
農学がカバーするのは、「生命」「食料」「環境」「健康」「エネルギー」「地域創成」など、私たちの生活に不可欠なテーマばかりです。文系の受験生は、「農学=理系」というイメージだけで、東京農大を受験対象から外してしまう傾向があります。
しかし、農学は文系・理系という区分で明確に分けることはできません。私は、農学研究の蓄積があるこの大学で、文系とされる経済学や地域活性化について学ぶ“付加価値”はかなり大きいと考えています。
キーワードは、教育理念である「実学主義」にあると思います。例えば、地元の地域活性化に興味がある受験生がいたとします。文系の大学を受験して、経済学を学ぶのもいいでしょう。
その一方で、東京農大の国際食料情報学部 食料環境経済学科で学ぶという選択肢も知ってほしいのです。この学科では、「食」に関する幅広い基礎教養を身につけた後、農家や畑だけではなく、市場やスーパーなどの生産現場などでの密度の濃いフィールドワークを経験します。その上で、課題解決の方法として、経済学、行政学や6次産業化を学びます。より実社会とのつながりを意識しながら、興味のある学問領域を学べる点が“付加価値”なのではないでしょうか。
他にも、経済・経営系の学びができる学科として同学部の国際バイオビジネス学科や北海道オホーツクキャンパス生物産業学部 自然資源経営学科などもあります。
文系科目のみで受験できる学科の中では、地域環境科学部 地域創成科学科が特徴的かもしれません。ここでは、「ひとづくり、ものづくり、ことづくり」をキーワードに、学生は地域の環境保全や防災に関する活動に取り組んでいます。
1年次から近隣の河川敷で植生調査を行うなど、さまざまなフィールドワークを経験します。また、このような地域の課題解決に不可欠な、各地の行政とのネットワーク、まちづくり、被災地の復興、災害対策、土壌分析などの知見を備えた教員たちや全国で活躍する卒業生たちの人脈が本学の強みですね。
農学部デザイン農学科の学びも非常にユニークです。ここでは「生き物」や「食べ物」の機能を詳しく観察した成果をプロダクトデザインや食品開発に活かす取り組みを行っています。例えば、タマムシの発色機構を模倣して、塗料なしで七色に光るスプーンの開発などが行われています。私たちはこれを「農」のイノベーションと呼んでいます。
その他、全学的に産官学の地域連携活動も盛んです。2020年3月時点で123件のプロジェクトが進行中です。
全学部で導入していた4つのAO入試などを引き継ぎながら、「総合型選抜」→「学校推薦型選抜」→「一般選抜」と東京農大への進学を強く志望する受験生に複数のチャンスを提供する3段階の流れをつくりました。総合型選抜と学校推薦型選抜では本学で学びたいという熱意を特に重視するのでぜひ、志望動機をしっかり準備してほしいと思います。
一般選抜は、3教科を選択するスタイルが基本です。1教科目は指定科目の「英語」で、これは全員必須です。2教科目は選択Ⅰとして、「国語」か「数学」のどちらかを選択します。これは23学科共通です。そして、キーになる3教科目は選択Ⅱとして、「理科」「地理・歴史・現代社会」にあたる分野から1教科を選択することになります。
例えば、「英語」「国語」「地理」を選択すれば文系科目のみで受験が可能になります。今年はコロナ禍の影響もあり、「数学」「理科」の発展問題は基本的に出題しない想定です。
農学 + 経済・経営・ビジネス系の学びができる
国際食料情報学部 食料環境経済学科・国際バイオビジネス学科
生物産業学部 自然資源経営学科
農学 + 地域活性化・環境・農学知識の応用・国際系の学びができる
農学部 デザイン農学科
地域環境科学部 森林総合科学科・造園科学科・地域創成科学科
国際食料情報学部 国際農業開発学科・国際食農科学科
農学 + 環境工学系の学びができる
地域環境科学部 生産環境工学科※2
(※2:地理・現代社会・世界史・日本史から地理のみ選択可能)
入学後に学力が不十分な基礎科目を補うための補習授業「リメディアル教育科目」を全学部で開講しているので心配はいりません。また、1・2年次から担任制度を設けて、担当教員が一人ひとりの将来像に合わせて指導を行います。そして、3・4年次には研究室に所属し、専門知識と技術を鍛えます。
学生たちは、こうした学びを通して、教員や学生仲間と密なネットワークを構築し、社会へ羽ばたいていきます。東京農大は就職に非常に強く、一人当たりの求人件数が全国平均の3倍(5・6倍)との数字にあらわれています。
東京農大には152の研究室があり、実に幅広いテーマの研究に取り組むことができます。話題のSDGsの17のゴールに関してもまさに東京農大が研究してきた分野ですべてカバーできます。
ここからも農学がいかに社会に求められている学問なのかがわかるでしょう。コロナ禍の受験ということで不安を抱えている人も多いでしょう。そのため、私たちも受験に関する最新情報を常に発信するように心がけています。どのような状況になっても熱意を持って東京農大を目指す受験生には必ず機会を用意するつもりです。
文系志望でも、「生命」「食料」「環境」「健康」「エネルギー」「地域創成」に興味があるなら、東京農大の“付加価値”の大きい学びの世界に飛び込んで来てください。
お話を伺った方
東京農業大学 入学センター長
小林順 氏
取材・構成
SINRO!編集長 河村卓朗