昨年から続く、指定校制推薦入試(以下、指定校)の人気が今年は更に加熱している。
以前こちらの記事でもご紹介したが、特に今年(2020年)は入試要項に落ちる可能性があることを示唆する大学もあるなど、絶対安心だった指定校といえども落ちるリスクが発生しているようだ。
本稿では、その理由について解説していく。
*首都圏私大の総合型・学校推薦型選抜 日程一覧(2022年度版)はこちら
指定校といえば、特定の大学と高校の信頼関係で成り立つ推薦入試枠。校内選考を通れば100%合格と思われてきた、受験生にとって安心この上ない推薦入試だ。
しかし、その指定校で少数ではあるが不合格となる受験生が増えつつあることをご存じだろうか?特にここ数年、指定校を多く出している中小の私大を準備不足な状態で受ける受験生にしばしば見受けられている。
本稿は決して受験生の不安をあおるつもりはないので補足すると、しっかりと選んだ指定校の大学について調べを済ませ、面接の準備もきっちりできている受験生はまず落ちるということはないのでご安心いただきたい(逆に、このような準備ができている受験生を大学側も絶対に落とすべきではない)。
落ちる心配があるのは、指定校だからと安心して最低限の調べすら行わないで面接に臨んでしまう受験生だ。なぜ最近、指定校で落ちる現象が散見されているのか?
その背景には、ここ数年の指定校利用者の急増がある。本稿では最近の指定校事情について解説していく。
*2021年7月追記 指定校関連+合格に役立つ弊社関連コラムはコチラ
9月以降、弊社が懇意にさせていただいている、首都圏の複数の公立高校の先生方から伺った話を総合すると、今年はお話を伺ったほとんどの学校で指定校の利用者が増加傾向にあるそうだ。
たとえば例年なら30名程度しか指定校を使わない(一般選抜で受験する層が多い進学校)某高校では、今年は指定校の希望者が100名に迫るという。もともと、指定校を活用する生徒が多い高校でも従来以上に希望者が多くなり、校内選考は「激戦」となっているとのことだ。
今年の特殊な状況を考えた時、これは首都圏のかなりの高校に共通する動向ではないかと思えてならない。
実は指定校人気は昨年からすでに始まっていた。それは近年の入学定員厳格化による大学の難化や、今年から始まる、大学入試改革を避けて、現役進学を望む受験生が殺到したからだった。
今年は大学入試改革の元年。昨年以上に安心確実な指定校で進路を決める受験生が増えることは予想されていた。
更に予定外の因子として春からの新型コロナウィルス禍がある。年明けに行われる大学入学共通テストや一般選抜の実施そのものが不透明になり、模試も充分に行われておらず志望校対策も立てにくい。
加えて、日本全体を覆う「不安感」が、もともと増える可能性が高かった指定校に更に受験生を集めている面も確実にあるだろう。
が、絶対安心の指定校も集まりすぎると大学によっては一部の受験生を落とさざるを得ない状況が起こるということは理解しておきたい。下記で詳しく説明する。
「落ちる」可能性が高いのは中小私大など、これまで指定校枠を多く出してきたところだ。指定校は交付した高校が全校使うということはまずないので、一部の人気校を除いてどの大学も定員より多く(たとえば定員の3~10倍くらい)の枠を高校に交付していると言われている。
最近は利用者が増えているので、定員オーバーにならぬよう、枠を減らす、成績基準を上げるなど、多くの大学が昨年以上に厳しい見直しを図っている。今年は指定校枠の数が減った高校も少なくないはずで、受験生にとっては厳しい話だ。
お付き合いのある高校から伺った実話として、中堅大学の中には今年の指定校に関する入試要項に「指定校でも落とす場合があります」とわざわざ明記する大学もあるという。
大学側も今年は指定校がかなり集まることを予期して、あとから「信頼関係で成り立つ指定校で落とすとは何事か!」と、高校に怒られないよう、事前告知を出しているのだろう。
これは私見になるが、しっかりと準備が出来ている受験生については大学側もたとえ想定より集まる事態になったとしても、受け入れる気概を見せて欲しいと思う。
大学も指定校が集まりすぎた場合、本当に少数ではあるが「不合格者」を出すケースがある。これは昨年すでに複数の大学で起きていて、弊社にも高校から相談があったほどだ。
特に注意してほしいのは中小私大に多い、もともと指定校を多く出している大学だ。これらの大学は指定校が集まりすぎて予定していた募集定員数をオーバーする状況になった場合や、特定の学科に応募が集中した場合などに、不合格者を出す状況になりやすい。
中小私大の入試担当者に聞いた、指定校で落とされる受験生の代表的なケースは、「面接内容がひどい(志望理由が弱い、アドミッションポリシーなど、志望校の基本的な情報を何も知らない、挨拶や会話で基本的な受け答えができていない)」、「レポートなどの提出物の内容が白紙だらけ。論理が破綻している」などだ。
逆に、しっかりと対応ができている受験生については、仮に予想より多く指定校が集まった場合でもできる限り受け入れるようにしているそうだ。
指定校が最も合格に近い入試であることに変わりはない。しかし「面接に行けば合格でしょ?」と、高をくくり志望校について何も調べずに本番に臨むと、大学によっては「不合格候補」となりかねないことはぜひ理解してほしい。
指定校だからと油断せず、志望校に礼を尽くす意味でも大学案内や動画コンテンツを見るなどして理解を深め、最低限のマナー対策をしてから面接に臨んでほしい。そうすれば指定校で不合格という、想定外のショックを受けるリスクは大きく減るだろう。
(文責 SINRO! 編集長 河村卓朗) 最新の大学入試記事はコチラ