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2020年度 大学入試改革(前編)

動向に左右されることなく合格ラインを突き抜けてほしい

  • 大学・短期大学進学 2019年 03月07日

2020年度以降の大学入試では「大学入学共通テスト(以下、共通テスト)における「記述式問題の導入」や「調査書の記載分量制限の撤廃」「英語4技能の評価」といった改革が行われます。全国の高校にとっては、これらの内容を理解して対策を進めることが喫緊の課題です。

そこで、半世紀以上にわたり蓄積してきた代々木ゼミナールの知見を学校現場に提供する、教育総合研究所の佐藤雄太郎所長にお話を伺いました。

記事の前編・後編

「学力の3要素」のものさしで受験生を評価

― 2020年度に向けた大学入試改革への見解をお聞かせください。

国が公表した2020年度からの大学入試改革(新しい制度による大学入試)は、“抜本的な”というよりは、“漸次的な見直し“ではないかと感じています。下の表を参考に、たとえば、共通テストとセンター試験を較べた場合、形式面では、日程や教科目(6教科30科目)等に変更がない予定で、出題範囲も現行の学習指導要領からとなります。英語については、共通テスト導入後は3種類―共通テストで課される筆記[リーディング]とリスニング、民間団体による英語資格・検定試験(以下、外部試験)の成績利用―となり、それ以外にいくつか変更点はあります。しかし、共通テストで課される2種類の試験は、センター試験を踏襲するかたちでの出題予定とされ、外部試験も、現在、多くの大学で導入されている試験の成績が活用されますので、現行入試を「リニューアルした」というように感じています。

新制度入試からの変更点として特に注目したいポイントは、「知能・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」という「学力の3要素」が、強調された点です。「学力の3要素」は、現行の入試制度でも重視される項目ですが、より多くの大学への浸透を促すため、現在、それぞれの入試区分で不足する要素を補完しあい、どの区分でも3要素をバランスよく評価することが求められるルールとなります。具体的には、一般入試において不足とされる主体性などの評価が強化されたり、AO入試や推薦入試で必ずしも求められなかった学科試験が課されたりするようになります。これまで「学力は問わない」ルールだった推薦入試も、新制度入試では学科試験等が課されることになり、受験生に対し全ての区分において3要素をバランスよく評価することが求められます。

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推薦入学の志望者も継続的な勉強が必要に

― AO入試、推薦入試では日程にも改革の“メス”が入りました。

日程の設定に関しては、新制度から「総合型選抜(従来のAO)」と「学校推薦型選抜(従来の推薦)」に合格発表日が設定されます。これまで、AO入試は8月1日、推薦入試は11月1日からと、出願時期のみがルール化されていました。極論すれば、出願翌日に合格通知を出すことも可能だということです。

しかし、今回の改革では、総合型選抜の合格発表は11月1日以降、学校推薦型選抜は12月1日以降に設定されています。受験生にとっては、現行よりも受験期間が長くなります。「AOや推薦を受験するからといって安心せず、継続して勉強してほしい」というメッセージともとらえることができます。

これまではAO入試や推薦入試などを「受験の練習」や「保険」として考え、先行して合格を確保したうえで一般入試にも挑戦させるというケースもあるようですが、合格発表まで日数があることで、受験生はより緊張感をもって「念のための勉強」に取り組むことになりそうです。

記述力は大学卒業後の実社会で役立つもの

― 記述式問題の導入についてはいかがですか。

しばしば、全国学力テストやOCEDが行うPISAの結果から、「日本の児童・生徒は表現が苦手」ということが示されています。そのあたりが記述式導入の背景にあるのではないか、と思っています。共通テストの国語では、“決められたルールのなかで、どのように解答できるか”を測るべく、字数制限を設けた記述式問題が中心になる見込みです。たとえば、30文字では少し長めの見出しを作成し、50文字ではリード文を簡潔にまとめるといったイメージです。120文字になると、課題文の読解力と意見の構成力を問う問題が想定されます。文字数制限のほかにも、語句や書き方が指定される場合もあるため、条件を正確に読み取る力が求められそうです。一定の条件下で考えをまとめて文章化することは、大学生や社会人になっても必要なスキルであるといえますね。

今回の「共通テスト」は、記述式問題の導入により、採点基準や方法についても注目されています。“共通で行うテスト”の記述式ですから、より公平な採点基準が求められる一方で、生徒自身も自己採点できるような工夫や配慮が求められていると思います。生徒が自己採点で難しい判断を迫られるような問題ですと、特に国語の場合、段階別に評価をしなければなりませんので、評価が大きく異なってしまうことも考えられます。

(後編へ続く)

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